【産業天気図・住宅/マンション】資金繰り難からマンションは供給・販売とも厳しい状態続き09年度も「雨」模様
09年4月~9月 | 09年10月~10年3月 |
住宅/マンション業界の2009年度の天気は年間を通じて雨の見通しだ。
09年の年明け以降、マンション販売の現場に異変が起きている。代表格は大京<8840>。IR担当者は「昨年10月以降、前年同月を上回る売れ行きが続いている」と言う。他のマンション専業もおしなべて順調だと言う。
この異変の理由は単純。価格の引き下げ効果だ。ここ数年、マンション価格は土地代や建築費の上昇に合わせて値上げされた結果、購買層の購入意欲が大幅に低下。が、昨年秋になると、今度はリーマンショックが日本経済を襲い、販売が一段と悪化したほか、金融機関による貸し渋りも表面化。このため、資金繰りに窮するマンション業者が続出しだした。そこで、手持ちの完成在庫を中心に用地代や建築費が上昇する以前の価格水準に引き下げたところ「飛ぶように売れ出した」(業界関係者)というわけだ。
しかし、この状態が長く続くとみる関係者は少ない。なぜなら値下げは企業体力を弱めるためで、ある程度続けたら止まるのが普通だ。今回の場合は、3月末に向けた在庫の圧縮や金融機関に対する返済原資の獲得が目的だった。
ただ、問題は購入者の求める価格水準は確認出来ても、マンションデベロッパー側がその価格水準で供給出来る状態になっていないことだ。一方、購買層も景気の先行き不安はむしろ加速しており、大幅値引き物件にしか飛び付かない状況が続く。マンションデベロッパーによる赤字覚悟の販売が長続きするとは考えられず、新規供給は絞られざるを得ないだろう。不動産経済研究所の調査では、08年のマンションの新規供給は4・3万戸と、前年の6・1万戸から大きく落ちた。が、09年は4万戸割れの可能性もある。
09年3月期業績は08年4月以降の棚卸資産評価損の原価計上開始の影響もあり、マンション専業の大京、ジョイント・コーポレーション<8874>、コスモスイニシア<8844>はいずれも大幅な営業赤字を見込む。また、来期も「棚卸資産評価損は計上済み」(大京IR担当者)と言われるが、依然赤字が残る見込みだ。
また、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>など総合不動産も09年3月期はマンションの後退をオフィス賃料のアップでカバーした格好だが、来期は景気後退からオフィス賃貸収入全体が減速する可能性が大きく、業績は弱含みに転換する。
(日暮 良一)
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