世界のゴミ問題は「福岡方式」が解決している 120カ国に技術指導、愛され"ゴミ先生"の正体
星野:ケニアの自治体の皆さんも、最初はあまり現場に頻繁に来なかった。いつも革靴できちんとスーツを着て、地元ではエリートですから。だけど、先生はとにかく知識と経験がケタ違いで、先生の話を聞くうちに全員目からウロコが落ちるような瞬間がある。そのうち、興味を持って現場に来るようになるんですよ。
松藤:日本や世界のどの現場でも、現地の環境や人から学ぶことがたくさんある。それを現場や学生に伝えています。
――現地の人とうまくいかないときは?
松藤:焦らず・慌てず・諦めず。イライラして相手の言葉が荒くなっても、こちらが怒ったら終わり。うまくいかないのは何か理由がある。そこをじっと観察しながら、いいところを引っ張り出します。それから、研究者に必要なのは、あくなき好奇心と謙虚さだと思います。
元スカベンジャー、10年後に会うと…
――働くことでスカベンジャーに変化があるでしょうね。
星野:スカベンジャーは日々の暮らしで精一杯。でも、先生のチームに雇われて働くと、すごく表情が輝いてくるんですよ。
先生はこの人は力持ち、この人は手先が器用と、それぞれ得意なことを見抜いて、班にわける。中には、日当をはたいて次の作業用にコテを買ってきて、また雇われるようにアピールする人もいるほど。働くことに誇りを感じ、先まで考えるようになるんですね。確実に意識が変わります。
松藤:僕は技術指導した場所をアフターフォローとして回っています。最初のマレーシアの埋立場では、すごく痩せた男性のスカベンジャーが廃品回収業をスタートして、どんどんビジネスがうまくいき、数年後に会うと羽振りがよくなっていた。
次に10年くらいして行ったら、今度は自ら土地を買って、数十人を雇用している。恰幅がよくなり、ベンツのような高級車に乗り、子どもたちを専門学校に行かせてね。僕が学生やJICA職員と現地を訪れると、皆にコーヒーを出してお土産まで用意してくれていて、日本の招き猫がほしいなんて言ったりして……。役所の人に言わせると、彼は俺よりもサラリーがいいんだと(笑)。KING of WASTE(ゴミの王様)と呼ばれ、スカベンジャーのサクセスストーリーとして新聞にも載っていました。
ほかにも、中古のトラックを買って廃品回収業で大成功して、社長になった人もいます。一緒に埋立した人がイキイキとして、ゴミや環境関係に携わってくれているのは、本当にうれしいですよ。
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