世界のゴミ問題は「福岡方式」が解決している 120カ国に技術指導、愛され"ゴミ先生"の正体

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――地元の人、というのは?

松藤:一般にスカベンジャーと呼ばれる、ゴミ拾いで生計を立てている人たち。彼らを見て眉をひそめる役人もいるけれど、考えてみたら、彼らはボランティアで使える物を仕分けてゴミを減らしてくれる人なんですよ。

ゴミ処分場を作るときは、彼らを2つのグループに分けて、1日おきに拾うように提案した。するとケンカや事故がなく安心して拾えて実入りもよくなり、僕らと共存できると認識してくれました。

そうなってくると、役人が彼らに30分だけ廃木材を拾ってほしいなどとお願いすることも。ゴミ処分場の環境を改善するのは、行政にも彼らにとってもいいことなので、だんだん彼らの顔つきが穏やかになって、仲間になってくれるんです。

星野:ケニアでも、先生は最初に調査に行ったときからスカベンジャーひとりひとりと握手して「こんにちは。また来るから僕のこと覚えておいてね」と笑顔で話しかけていました。現地には老若男女200人ほどのスカベンジャーがいて、1週間でのべ100数十人くらい日雇い労働者として現地の自治体が雇ってくれる。それも先生の要望から始まったことです。

先生たちがやり方を指導すると、皆あっという間に仕事を覚えます。先生が「よし」「やめ」などと日本語で言うのを覚えて、お互いに「よし」「やめ」と声をかけ合って作業する。私たちが先生のことを「せんせい」と呼ぶから、現地の人も「せんせい」と呼ぶんです。

信頼を得るには、自分がフロントに立って作業する

松藤:(ゴミ処分場の)完成まで、毎日20~30人くらい雇いました。仕事があると噂を聞き、スカベンジャーたちが毎日集まってくる。すると、その作業員たちを相手におばちゃんがコーヒーを売りに来たりして、小さなコミュニティができる。

今、僕が提案しているのは、日本人が廃油から石鹸作りを教えて、雨水をため太陽光で温めたシャワーを作ったらいいのではということ。埋立の改善を通して、ちょっとした生活改善の道筋をつけるお手伝いもできればと思っています。

――へー、すごいですね。現地で受け入れられる秘訣は?

松藤:僕自身が長靴を履きスコップを握って、フロントに立って作業することかな。信頼されるには、一緒に汗を流すことが大切。日雇いの人たちが僕は大学の先生だと知って、大変驚いていたそうです。

どこの国に行っても、国の官僚や自治体の人たちの中には、現場で不快な顔をしたり、視察に行っても車両から決して出ようとしない人もいるものです。

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