「つられ笑い」できない人に迫る、精神の危機

心と体から「ゆとり」が失われていないか

実際、「つられ笑い」をしない人に聞いてみると、たいていは「つまらない!」と思っているわけではないといいます。それなりに「ああ、面白いな」とは思っている。しかしながら、「笑顔」や「声を出して笑う」というレベルまで感情として表現できないというんですね。

体が力み、緊張し、身動きが取れなくなってしまうと、腹の底から笑うことができなくなります。特に横隔膜のあたりが固まってしまうと、「面白い」と思っても「笑い」に昇華しなくなってくる。頭の中は笑っていても、体が笑えない。そして、体から笑えない人は、他人とシンクロできないのです。

また、そういう人は「笑い」にはシンクロしないけれど、「怒り」や「不安」といった感情にはシンクロしやすくなります。なぜなら、怒りや不安といった感情は、身体が力み、呼吸がつまるような身体感覚とともにあるものだからです。

リラックスしている人よりも緊張している人のほうが、怒りや不安といったネガティブな感情に同調しやすいということは、経験的にはみなさんご存じのとおりです。たとえば、電車の中で誰かが怒鳴り合いのけんかを始めたとする。その「怒り」の感情を完全にシャットアウトして、自分だけは涼しい顔でいる、ということができるかどうか。自分がイライラしていたり、緊張していたりすると、あっという間に「怒りの空気」に感染してしまう、ということが起きる。

「寄りかかる対象」を失った現代人

一方で「笑い」の場合、そうしたガチガチに固まった心身では決してシンクロできません。「つられ笑い」が起きにくい人は、周囲の人の怒りや不安に同調し、笑いに同調しにくい。そういう状態にあるということです。

ちょっと、あなた自身の経験を振り返ってみてください。最近、「つられ笑い」をしたのはいつだったか。

いまの日本人を見渡してみると、老若男女多くの人が、「つられ笑い」が起きない体に陥りつつあるように思います。要するに、体がかたくなり、心が重くなってしまい、笑いにはシンクロせず、怒りや不安ばかりに同調しやすくなってはいないでしょうか。

その背景には、日本人の多くがある種の「信仰」を失いつつあることが、影を落としているように思います。

かつての日本人は、キリスト教やイスラム教のような一神教信仰は持っていなかったものの、「家族」や「会社」といった、寄りかかる対象を持っていました。しかし、今の日本人の多くは、自分なぜ自分が働き、家族を養い、生きているのかということについての、明確な答えを持っていません。

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