「つられ笑い」できない人に迫る、精神の危機

心と体から「ゆとり」が失われていないか

ここ最近、アナタは気持ちよく「笑えて」いますか? 精神科医・名越康文の公式メルマガ「生きるための対話」からお届けしています(写真 : ra2studio / PIXTA)
誰かが笑っていると、つい自分も笑ってしまう「つられ笑い」。内容を理解せずに笑うのっていけないことなんでしょうか? いえいえ。むしろつられ笑いには、人間という生き物が太古の昔から培ってきた叡智が秘められているのです。

 

最近、バラエティ番組に出させていただく機会が多いのですが、収録現場にいると感じるのは、会場にいる芸人さん、スタッフさん、そしてお客さんが、あたかも「一つの生き物」のようになることによって「笑い」を作っている、ということです。

その場にいるすべての人が、一つの生き物になって、笑いが起きる。これはなかなか、気持ちのいい体験です。

どれだけ大爆笑をしたとしても、1人でテレビを見ながら笑っているのと、何人かの人と一緒に、体を共振しあうように笑うのとでは、まったく違った感触がある。他者の体と共振する笑いこそが、本当の意味での「笑い」の原点なのかもしれない。そんなふうに思うんです。

笑いの本質は「つられ笑い」にある?

当記事はプレタポルテ(運営:夜間飛行)の提供記事です

「笑い」というのは、昔から多くの心理学者や精神科医が取り上げてきた、心理学的には重要なテーマのひとつです。

そのなかでも僕は最近、「つられ笑い」というものに注目しています。バラエティの収録現場のお話をしましたが、自分自身が舞台に立って話しているときや、誰かの舞台を見に行ったときに気になるのは、会場のほとんどの人が笑っているときに、その笑いに断固としてつられず、むすっとした顔をキープし続けている人の存在です。

もちろん、面白くないのに無理に笑う必要はありません。笑う・笑わないのはその人の勝手ですから、つまらなければ笑わなければいい。ただ、たとえ自分が面白いと思っていなくても、周囲の人が笑っているとついつられて笑ってしまう「つられ笑い」が生じること自体は、決して不自然なことではなく、むしろ人間にとって自然な現象だと思うんです。

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