ネット時代、「名誉毀損」はこんなに変わった 「損害」と認められる範囲が広がった意味
ツイッターや2ちゃんねるなど、インターネットでは、匿名アカウントによるデマや誹謗中傷が絶えない。ちょっとした投稿がきっかけで、誰もが巻き込まれる可能性がある。
名誉毀損に詳しい佃克彦弁護士は、「インターネット上の名誉毀損問題が非常に増えている」と指摘する。ネットに限らず、名誉毀損にはどんなトレンドがあるのだろうか。注目すべき判例を聞いた。
特定に必要な調査費も「損害」になる
佃弁護士は「名誉毀損をめぐる裁判では、少しずつ新しい判断が出ています」と説明する。
最近注目の判例として挙げるのは、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」の書き込みに関する損害賠償請求事件だ(東京地裁平成24年1月31日判決)。
盗撮をしたとうかがわせるような内容を書き込まれた原告A氏が、弁護士に依頼して、投稿した被告B氏を特定し、名誉毀損で訴えた。東京地裁は、B氏の不法行為責任を認め、慰謝料100万円と弁護士費用10万円に加え、書き込んだ人を特定するための調査費用63万円も支払うよう命じた。
「インターネット上の書き込みにまつわる名誉毀損では、まず、ネット上に書き込んだ人が誰であるかをつきとめるための裁判手続が必要で、その手続で人物が特定できた後、ようやく名誉毀損の裁判を起こすことができるのです」
判決文によると、この事件で原告側は、(1)掲示板の管理者である海外法人にIPアドレス開示仮処分を申請して、IPアドレスとアクセスログの開示を受ける、(2)IPアドレスから判明したインターネットサービスプロバイダ(ISP)に対して発信者情報開示請求を行い、B氏の住所・氏名の開示を受ける、という過程を踏んだ。一連の手続は、弁護士に依頼している。