地球上の食物連鎖の頂点に立つ人間を捕らえて食べる捕食者などどこにもいない、と考えるのは早計です。人間の生存に大きな環境変化をもたらす捕食者はいくらでも考えられます。
その中でも大きな存在は、細菌、ウイルス、寄生虫のような「寄生生物」です。ウイルスのような寄生生物は宿主である人間の遺伝子に致命的なダメージを与え、人類を絶滅させるだけの劇的な環境変化をもたらします。この時に、もし人間の遺伝子構造が単一でなく多様であれば、人間すべてがウイルスに感染して全滅してしまうことを避けることができるわけです。
この多様な遺伝子構造にこそ、オスの存在理由があります。つまり生殖により遺伝子を混ぜ合わせることがオスの使命なのです。メスの子供だけが生まれるメスだけの社会の方が効率的に子供の数を増やすことができます。短期的にはメスだけの社会の方が子孫を多く残せるのです。
一方で、オスとメスが半々の社会では、子供を産むメスの数が半分になりますから、子供の増産スピードは半分に落ちます。しかしオスとメスがいることで子供の遺伝子は多様化しますから、ウイルスの攻撃による環境変化にも生き残る確率が高くなります。
長期的に見ると、メスだけの社会はいずれウイルスの攻撃により全滅の危機に瀕する時が訪れるでしょう。しかしオスが存在することで、長期的な生存率を確保することができるのです。「いかに多く子孫を増やすか」よりも「いかに滅びないか」の視点で生物の進化を考えると、そこにオスが誕生した必然性を理解することができるというわけです。
何事も起こらなければ必要ないのが保険
何事もない平穏な生活が続いている時には、何の役にも立っていないと思われるのが保険です。しかし、予期せぬ事態が起こった場合にこそ、保険はその存在価値を発揮します。
オスも同様です。大きな環境変化が起こらなければ、メスだけで十分に子孫繁栄させることができます。しかし、何万年、何十万年という超長期な進化論的視点に立てば、生存環境を脅かす事態は必ず起こります。そこにオスの存在理由があります。
つまり、男は女にとって「滅びないための」保険なのです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら