【映画産業】2007年は興行収入微減、洋画が邦画を逆転、08年は宮崎アニメ新作が焦点
2007年の映画興行成績は、入場人員が前年比0.8%減の1億6319万人、興行収入は2.2%減の1984億円で2000億円を再び割った。うち邦画は12.3%減、逆に洋画は9.3%増で邦画対洋画の比率は47.7対52.3(前年53.2対46.8)と再び洋画優位に逆転された。
興行収入10億円以上のヒット作は、邦画は合計29本で前年の28本を上回った。一方、洋画は22本で横ばいだった。邦画ではベスト10のうちトップの「HERO」(81.5億円)始め9本を東宝<9602>が占めた。東宝の興行収入は、595億円余で過去最高記録を更新した。これに対し、ライバルの松竹<9601>は、ヒット作29本中の5本、東映<9605>は、3本で「過去20年間で最低」(岡田裕介・東映社長)と完全に明暗が分かれた。東宝の場合、フジテレビ<4676>(「HERO」「西遊記」など)、日本テレビ<9404>(「ALWAYS 続・三丁目の夕日」など)など有力テレビ局が主体となって製作した作品が成功し、「いい作品・企画、いいパートナー、いいスタッフに恵まれた」(高井英幸・東宝社長)点を好業績の理由に上げている。
ただ、こうした中で映画産業の抱える新たな問題点を日本映画製作者連盟の松岡功会長は次のように指摘する。「映画館数が最近で最も少なくなった93年(1734スクリーン)当時、大都市の大映画館は好調で一館当たり年間収入は9400万円あった。それが96年には8100万円、昨年は6100万円に減少した。一時はシネコン(複合映画館)の増加に伴うハードによる入場者数があったが、最近はシネコンの競合で新入場者増は期待できなくなった。ますます映画の企画や内容が重要になってきた」。昨年の映画館数は3221スクリーンで5%増、今年も126スクリーン程度の純増が予想される。
2008年について松岡会長は「邦画はいいと思う。洋画は米国でストをやっているし、米国で入る映画が日本では入らない」と再び邦画逆転を示唆する。その中で最大の焦点は今年7月に公開予定のスタジオジブリ・宮崎駿監督作品「崖の上のポニョ」である。2001年に公開された「千と千尋の物語」は興行収入300億円を超える大ヒットとなったが、今回の作品がこれを超えるかが注目点である。それによって邦画の再逆転の可能性が出てくる。
松竹の迫本淳一社長は「シネコン会社は厳しい」としており、この面からの業界の再編成が表面化することも考えられる。
【宇田川 日出雄記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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