“100年に1度”の津波でも対応できない現実--震災が突きつけた、日本の課題《4》/吉田典史・ジャーナリスト

“100年に1度”の津波でも対応できない現実--震災が突きつけた、日本の課題《4》/吉田典史・ジャーナリスト

「“100年に1度の災害”と“1000年に1度の災害”を分けて考え、それぞれに適した防災を推し進めないといけない。震災前には、このことが不十分だった。私たち研究者も反省すべきなのだと思う」

津波防災を長年にわたり研究する都司(つじ)嘉宣氏は語る。今年3月末で東京大学地震研究所を定年退官し、現在は独立行政法人建築研究所で特別客員研究員を務める。

“1000年に1度の災害”には無防備だった

都司氏は昨年3月11日、地震発生直後にNHKの報道番組に出演し、津波が押し寄せる映像をスタジオで見ながら解説をした。その際、被災地の住民に向けて「ビルの3階以上に早く上がり、避難をしてください」と呼びかけた。

しかし、その後、津波は勢いを増し、6階にまで達した地域がある。都司氏はそのときのことを振り返る。

「これまでに国内で発生した津波は、高さ10メートル以上のビルの3階に達したケースは少ない。ましてや、ビルが倒壊するという事例はほとんどなかった。だから、ビルの3階以上へ上がることを呼びかけた。だが、“1000年に1度の災害”となると、状況は変わってくる。あのスタジオにいる時点では、そこまで大きな津波になるとは予想していなかった」


都司嘉宣氏

津波防災の先進国である日本でなぜ、“100年に1度の災害”と“1000年に1度の災害”を分けて対策を練ることができなかったのか。都司氏に尋ねると、こう答えた。

「ごく一部の研究者を除き、ほとんどは“1000年に1度の災害”に備えての提言をしていなかった。そもそも、“1000年に1度の災害”に有効な対策はなかなかない。私も四国などで講演をするときに、“100年に1度の災害”への対策を主に話していた」

都司氏は、今後は津波防災の研究者は“1000年に1度の災害”についても対策を考えていくべきと説く。

「海岸地域に住み、80歳まで生きる人が、このレベルの災害に遭遇する可能性は8%であり、決して低い数字ではない。人の命と原発は“1000年に1度の津波”に備えた体制にすべき」と唱える。

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