将来への布石は打った、現場力向上で成長軌道へ--富士フイルムホールディングス会長・CEO 古森重隆

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──ピースの補強とは。

たとえばメディカル・ライフサイエンス事業では、2018年度に1兆円という売り上げ目標を掲げています。そのためには、さらに事業を補強していく必要があります。

超音波診断装置の米ソノサイト社を買収した診断機器分野。そして、協和発酵キリンと合弁会社を設立したバイオ医薬分野。そして、われわれのサイエンス技術を生かした化粧品事業では、新しい機能を加えた新製品を開発し、アジア、欧米など海外展開も積極的に進めていかなくてはいけません。これらの分野で補強と事業の加速が必要です。

第1段階で、大きな幹と枝は育ちました。しかし幹と枝だけではなく、そこからさらに小枝や葉っぱが茂らないといけません。それは結局、現場力です。生産、販売、R&D(研究開発)、そして間接部門。それぞれが価値を生産すれば、厳しい経営環境の中でも十分に勝てます。この四つの現場力のブラッシュアップを、中嶋新社長に陣頭指揮を執ってやってもらいたい。

富士フイルムのプライオリティ

--社長時代に二度の構造改革(写真フィルム市場が激変した05~06年、リーマンショック後の11年)を断行しました。社運を懸けた構造改革に最も必要なファクターとは。

何が組織にとってのプライオリティかをはっきりさせることです。われわれの場合、全利益の3分の2を稼いでいた写真フィルム事業が2000年にピークを迎えました。そこからデジタルカメラの普及が急速に進んでフィルムカメラが激減。会社にとってのコア事業が崩れ始めたわけです。このような環境変化を迎え、どうやって会社を生き延びさせるか。生き延びるとはわれわれにとって生まれ変わること。会社を再生することです。一流企業として存在し続けるには何をすべきなのか。これこそが、当時の富士フイルムにとってのプライオリティでした。

構造改革に伴って人員削減を行い、数千億円の費用もかかりました。しかし、8万人の社員、そしてその家族を含めれば数十万人がいるのに、会社が潰れてしまえば何も残らない。どちらが大事なのかを考えれば、やらなくてはいけないことは明らかです。

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