ニューヨーク証券取引所には中国など海外の有力企業が上場しており、それが米国国内に雇用と所得を生み出していると、第54回で述べた。資本取引が国境をこえて自由に行われる時代になったため、こうしたことが生じている。
国際的な資本取引は、より直接的に、「所得収支黒字」という形での所得を生んでいる。これは、対外資産の運用益から対外負債への利払いを引いたネットの所得だ。こうした所得獲得機会をうまく捉えた国が豊かになる。その反面、捉えそこなった国は、本来享受できるはずの豊かさを手に入れることができない。
日本は、残念ながら後者の代表だ。巨額の対外資産を保有しながら、それをうまく活用できておらず、受動的な運用に終始しているのである。
日本の対外資産の運用利回りは、図のとおりだ(ここで「運用利回り」は、所得収支受取りを年末の対外資産額で割った値として計算した。なお、ここには2007年までの推移を示す。08年以降は、為替レートの変動等によって、以下で述べるのとは異なる傾向が生じている)。
00年以降は、ほぼ3%程度の水準だ。これは、当時の米国10年債の利回り(4~5%程度)にも及ばない低い水準だ。米国国債は、安全で流動性の高い資産なのだから、信じられないことである。対外資産の約半分を証券投資が占めており、なかでも短期国債の比重が高いため、利回りがこのように低くなるのだ。