(第57回)豊かな資産を持つ日本はそれを活用すべきだ

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なお、当時の日本国債の運用利回りは、1・5%程度だった。だから、「国内で運用するより利回りが高いからいいではないか」との意見があるかもしれない。

しかし、そうは言えない。なぜなら、対外資産は為替差損を被るからだ。「内外金利差は為替差損で相殺される」というのが、金利平価理論の教えるところだ。実際に08年以降の円高で、円ベースでの対外資産額は減少した(ただし、円ベースで減っただけであり、ドルベースでの購買力が落ちたわけではない)。

米国は低い利回りで調達して高く運用

日本の対外資産の運用利回りが低いのは、日本の金融力の欠如の結果である。

1980年代のバブル期、日本の生命保険会社は、株や不動産などを対象に巨額の海外投資を行い、「ザ・セイホ」と呼ばれた。しかし、その後、日本国内でのバブル崩壊によって不良債権を抱え込み、海外投資からは撤退した。

そのときのトラウマで、「あつものにこりてなますを吹く」状態となり、対外投資でもリスク回避だけが重視されるようになっているのである(ドル建て資産に偏っているため、実はリスク回避になっておらず、きわめてリスキーな投資だが)。

米国の対外資産の利回りは日本より1~1・5%程度高い。

なぜこうなるのだろうか。その理由は、対外資産に占める直接投資の比重が大きく、そして、直接投資の収益率が証券投資のそれよりも高いことだ。だから、証券形態で資金を調達して、直接投資で運用すれば、所得収支がプラスになるのだ。

ところで、日本から米国への資本輸出は、米国の資本輸入全体の中で大きな比重を占めている。そこで、日本の対外資産利回りで米国が資金調達していると見れば、1~1・5%の利ザヤが稼げるわけだ。

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