山内:はい。気持ちはよくわかります。ただ、親が子供に先回りしていろいろやりすぎてしまうと、子供の学習に対する主体性が育たなくなってしまいます。
21世紀型スキルには、学び方の学習(Learn How To Learn)という目標があるのですが、自分の学習を自分でコントロールして、成長につなげていくための重要な概念です。その観点から見ると、子供が自分で挑戦し、失敗から学ぶことも、重要な経験です。親は失敗した時の原因や今後どうしていけばよいかを一緒に考えてあげればよいと思います。
勉強するハードルをネットが下げる。
加藤:親の子供に対する姿勢では、介入したり、無関心すぎたりするのではなく、子供と対話することが重要なんですね。山内さんご自身の体験談はありますか?
山内:亡くなった私の父親は中学校の教員だったのですが、あまり私の勉強に対して口を出すタイプの人ではありませんでした。その代わり、本をたくさん買ってくれました。文学全集や科学的なトピックを扱った事典、歴史全集もありました。何に関心持つかわからないから、ひととおりの分野の本を用意してくれたんです。そこで調べたことについて、よく父親と話していました。
また、「中学生になったら、本屋に行って自由に本を買っていい」と言われていました。田舎で図書館が遠かったということもありますが、自分の関心に応じた学習資源を手に入れることができたという意味で、父親には感謝をしています。
加藤:教員をされていただけあって、教育に関するとらえ方が寛容で柔軟なお父さんだったんですね。
山内:そうですね。改めて考えてみると、私がICTを利用した学習環境を研究するようになった原点には、父親が与えてくれた本があったように思います。私が子供だった当時はネットがありませんでしたから、そうやって本からさまざまな知識を吸収できたことは恵まれていたと思います。今だったら父親は「MOOCで勉強するのも面白いよ」って言ったかもしれませんね。
加藤:素敵なお父様ですね。私がRISUで接する保護者の方の中にも、山内さんのお父様のように新しい知識を育む必要性に気づいている方がたくさんいます。特に21世紀型スキルの必要性については、「教育の目標や方針もそれに合わせて変えていかなければならない」と多くの親が気づき始めていると思います。でも、結局多くの学校は解を提供できてないように思います。金銭的・地理的・時間的などさまざまな障害があって、RISUのようなサービスやサマースクールなどの外部のチャンスに触れられる子は一部に限られています。
学習指導要領が変わって教員が成長し、学校が変化するまでの10年、20年の間は21世紀型スキルを身に付ける機会に恵まれない子供たちが存在し続けるんだろうなと。
そんな中で親はどうすればいいんでしょうか?
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