右肩下がりの日本の救世主は「冷凍食品」だ 楡周平が小説「和僑」で描いた夢物語

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それこそ国が音頭を取って大々的にやったらいいんですよ。B級グルメグランプリみたいなイベントを海外でやったら面白い。ハンバーググランプリとかコロッケチャンピオンとか、日本のポークやポテトはおいしいよと広める機会を作る。日本のハンバーグの味を一度知ると外国人は大好きになるんですよ。日本の肉を使って味付けして、あとは湯煎すればOKの冷凍食品で輸出したら、爆発的にヒットすると思うけどな。

日本に住んで海外起業。これも立派な和僑

──和僑というタイトルは、日本人も華僑のように世界に散ってリスク分散せよ、ということですか?

最終的にはそれも考えないと危ないんじゃないかと思うけど、まずは一族が海外に散って住まなくても済むようにと書いたのが本作なんです。非正規雇用が増えて若い人が家庭が持ちづらくなり、人生設計を描けない。でも地方には休耕田があり空き家がたくさんあり、過疎化に悩む町だらけです。だから地方へ移って競争力のある農産物を作って、冷凍食品で販売ルートを構築すれば生きていく糧が得られる。ビジネスチャンスはそこにある、と言いたかった。

海外に道を求めるという意味で、これも立派な和僑ですよ。日本に居ながらにして和僑になれるってこと。日本の活性化につながる日本の食という強みを生かさなきゃもったいない。あと10歳若かったら自分でビジネスを起こしたいくらいです。

──今まで多彩なビジネスモデル小説を書いてこられましたね。

基本的に、新しいビジネスを考えるのが好きなんです。会社員時代もそれをやってましたんでね。理想をいかに実現させるか知恵を絞る、というのをまさに身に付けさせられましたから。80億円で日本に物流基地を建てろ、日本のオペレーションを再構築しろと、アメリカ人の上司にプロジェクトマネジメントのノウハウを一からたたき込まれたんです。

そこで学んだのが、コンセプチュアルデザイン(概念設計)でした。夢物語を書くんです。自分たちがどんな物を作ってどんな仕組みで動かしたいのか。こうしたい、こうなればいい、の世界。その目的は全員でゴールを、共有することです。だから夢物語でいいんだと。夢物語を書くと、そのために何を解決しなきゃいけないか問題が見えてくる。それを一つひとつ潰していくわけです。

──アメリカ輸出にメドをつけ、一歩踏み出すところで物語は終わっています。続編を予感させますが。

和僑(祥伝社 1600円+税/315ページ)、書影をクリックするとアマゾンの販売ページにジャンプします

……そうですね。でも、その先の日々の運営の話、読みたいですか? 僕はこの本で地方再生のための概念設計を書いた。僕のビジネスモデル小説はつねにこの概念設計で、ゴールに行くための手法です。達成後ビジネスを回してくことには、実はあまり興味がない(笑)。

余談ですが、プリクラの原理を最初に特許出願したの、僕なんです。直後に会社を辞めたし、会社もだんだん傾いて、それから先はうやむやになりましたけど。新しいことを考えるとき、まずゴール、そしてそのプロセスをどうするか考えていくのが好きなんです。ビジネスマン時代の血がいまだに抜けてないんですよ。

 

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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