とにかく日本の農産物の質の高さ、食文化の多彩さは世界で断トツです。僕はサラリーマン時代、アメリカ系企業で働いて、向こうでの経験も多い。生ものが苦手で日本食といえば天ぷら、鉄板焼きが定番だったのが、すしの味を覚え、今や彼らの興味はB級グルメに来てる。マンハッタンに日本のカレー屋がどんどん出店し、豚骨ラーメンなんかもすごく受けてる。日本人の味覚は世界に通用するんですよ。
困難を語るのではなく理想をどう実現するか
──本作は、舞台である町の農畜産物を活用した新たな食材輸出がテーマですが、そもそも質のいい産物に有能な役者ぞろい。現実離れした理想的すぎる設定ではありますが。
いやこんな町、日本中にありますよ。日本に住む日本人が気づいてないだけで、僕たちの当たり前って世界では当たり前じゃないんです。食に対する追求も日本は突き抜けてるんですね。日本の常識は世界の非常識、いい意味でね。
どうしたら日本の食を海外に発信できるかを考えたとき、生鮮品は輸送コストがネックになる。それならメンチカツとかトンカツとか、冷凍食品にしてはどうかと思いついた。
冷凍食品なら季節性が解消されるし、船便を使えるので輸送費も格段に安く済む。十分競争力を持つんです。現地で追随する業者は出てくるだろうけど、しょせん日本の豚肉よりは味が格段に劣る。ニューヨークで千何百円するラーメンに行列し、それが立派なディナーとなるくらい、アメリカ人が現実に日本の味に目覚めつつある。食の輸出は可能性十分と僕は思ってますね。本の中でも書きましたが、問題を解決するために必要なのは、困難を語ることじゃなくて、理想をいかに実現するか、そこに知恵を絞ることです。
──今回その具体例を示したと。
そうです。でも大方は、「そんなふうにできるといいね」「現実は厳しいよね」と言う。書評や読者からそんな声を聞くたびに、実はカチンと来てた。できるといいねと思うなら、やりゃいいじゃないか。現実はそう甘くないと言うけど、甘くないか甘くするかは、やる側の気持ち次第だって。
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