男女関係の「別れさせ工作」は公序良俗違反か 探偵業者に依頼、破局を仕掛けた女のケース

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「別れさせ工作」は、公序良俗違反になる可能性があるのでしょうか(写真 : voyagerix / PIXTA)

探偵業者が依頼を受けて、男女関係を終わらせるように仕掛ける「別れさせ」をめぐる契約が、公序良俗に反して無効かどうかが争われた訴訟の控訴審判決が11月上旬、大阪地裁であった。佐藤哲治裁判長は「契約が公序良俗違反とはいえない」と判断。探偵業者が求めた報酬など約97万円の支払いを、依頼者の女性に命じる判決を下した。

共同通信によると、依頼者の女性は2014年9月、好意を寄せる男性の交際相手と考えていた女性を調査対象とする契約を、大阪市内の探偵業者と結んだ。男性工作員が対象女性と連絡先を交換すれば90万円、別れさせた場合は45万円を報酬として支払う内容だったという。

探偵業者の男性は、対象女性に声をかけて、その数日後に偶然を装って再会を演出。食事をしたり、電話番号交換や無料通信アプリのLINEでデートを約束するなどしていた。依頼女性はその後、好意を寄せる男性と対象女性が交際していないことに気付いて、工作の中止を探偵業者に求めた。

佐藤裁判長は、今回の契約の内容について、(1)対象の女性らが独身だった(2)工作の過程で性的関係を持つなどの方法も予定していなかったと指摘。「実際に関係が終了するかは、対象者の意思次第で、業者が別れさせる目的を達成できる可能性が高いともいえない」として、公序良俗に違反しないと判断した。

対象者が独身でなかったら?

当記事は弁護士ドットコムニュース(運営:弁護士ドットコム)の提供記事です

今回の裁判のポイントはなんだろうか。どんなときに「別れさせ工作」は公序良俗に反するのか。男女問題にくわしい渡邊幹仁弁護士に聞いた。

「今回の裁判では、『別れさせ工作』をするという契約が『公序良俗』に違反すると言えるかどうかが争点となりました。

本来どのような契約をするかは自由です。これを『契約自由の原則』といいます。しかし、違法な内容の契約など、どんなものでも常に、『契約自由の原則』として有効とするわけにはいきません。

民法でも、『公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする』とされています(民法90条)」

渡邊弁護士はこのように説明する。今回のケースは、なぜ公序良俗に違反しないとされたのだろうか。

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