『ライ麦畑でつかまえて』『モンテ・クリスト伯』東大生が夢中になって読んだ人気名作文学3選

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では、東大生たちはどんな作品を好み、なぜそれらに魅力を感じるのでしょうか。今回は、そうした「過去の名作」の中でも特に人気が高く、印象的な3作品を取り上げます。それぞれのあらすじを簡単に紹介しながら、なぜ今の学生たちにも刺さるのかを考えてみます。

東大生が夢中になって読んだ名作文学3選

1. 『1984年』
一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)
『一九八四年〔新訳版〕』(ハヤカワepi文庫)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ジョージ・オーウェルによるディストピア小説の代表作です。舞台は、国家によって徹底的に監視・統制された社会です。主人公ウィンストン・スミスは、あらゆる自由が奪われた世界の中で、密かに「自分の心」だけは守ろうとします。しかしその心の自由さえも、体制は容赦なく侵食していきます。

東大生、とくに法学部の学生にこの作品を挙げる人が多いのは、とても象徴的です。法や制度を学ぶ人ほど、「人間の自由はどこまで守られるのか」「権力はどこまで人間に介入できるのか」という問いに敏感だからです。

私たちはふつう、「行動は縛れても、内面までは支配できない」と考えています。他人の発言を封じたり、行動を制限したりすることはできても、心の中で何を考えるかまでは自由である、という感覚です。どんなに不自由な社会になっても、最後の砦としての“内面”は残るのではないか。多くの人が、そう信じています。

しかし『1984年』は、その感覚が幻想かもしれないことを突きつけてきます。現代でも、カルト宗教によるマインドコントロールや、SNSを通じた大衆心理の誘導が指摘されています。情報の与え方や言葉の枠組みを変えることで、人のものの見方そのものが動かされてしまう。そう考えると、この作品は単なる古いSFではありません。むしろ、今の時代だからこそ生々しく読める小説です。

「心は自由である」という当たり前の前提を打ち砕く。『1984年』の恐ろしさは、そこにあります。そしてその恐ろしさこそが、社会や権力について考えたい東大生たちを強く惹きつけているのだと思います。

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