カギとなるのは、やはり中国の姿勢だ。李克強首相は早期締結への協議を加速すべきだと発言し、積極的姿勢を見せた。また、一連の会議を通じて中国は刺激的な言葉を口にすることは控えており、中国は「協調的だった」と評する報道もあったくらいだ。
しかし、「行動規範」の早期締結についても、「具体的な時限は決まっていない」と中国の事務方は述べている。また、中国は、埋め立て工事は何ら問題ないとする態度を変えていない。南シナ海の問題は域内の国が直接話し合うことで解決すべきだということ、すなわち米国などを締め出す主張もやめていない。
さらに、ASEANの内部資料によると、中国は航行・通信の安全や救難救助などのため「協力メカニズム」を構築する提案をしている。これは、ASEAN側によれば、人工島を協力の拠点にすることにより埋め立て工事を既成事実化しようとするたくらみだ。
このように見ていくと、中国に「行動規範」の締結を急ぐ意思が本当にあるのか、疑われてもしかたがないだろう。
米国が考えていることは?
一方の米国は南シナ海における中国の行動に対して強い姿勢を取るようになった。
前述したように米艦を12カイリ内に立ち入らせ、また、オバマ大統領自身、国際法違反の行為を控えるよう中国を説得することを各国に求めてきた。今般のASEAN会議やその直前のAPEC会議が米国にとって関係国へのさらなる働きかけのために格好の場となったのは当然だ。
米国は、中国の違法な行動に反対する国際的連帯を形成しようとしていると言えるだろう。軍事的な包囲網を作り上げようとしているのではない。12カイリ内への立ち入りは、それが軍事的衝突に発展しないとの確信の下に実行したものと思う。しかし、南シナ海で中国がこれまで通りの行動を続けると、海洋の自由など国際法の重要な原則が損なわれると強い危機感から行動していると思われる。
東南アジア諸国は中国との関係において一枚岩でなく、まだ完全にはこの国際連帯に加わっていない。今回の会議でも、カンボジアなど一部の国は中国との関係に配慮する発言を行った。また、積極的に態度を表明しない国もあった。しかし、その他の国、大多数の国は中国の行動に批判的だった。とくに南沙諸島に最も利害関係が深いフィリピンは、自国でAPECの首脳会議を開催した時とは打って変わって率直な中国批判を名指しで行っている。
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