遺産分割でもめる家族や財産に類型あり--『モメない相続』を書いた長谷川裕雅氏(弁護士、税理士)に聞く
額は少なくても、「もめる相続」が増えている。「もめない相続」にするにはどうしたらいいのか。それには「備えあれば憂いなし」、要件を満たした遺言を書いておくことだという。
──「もめるポイント」は三つに絞られますか。
遺産分割でもめやすい家族や相続財産にはパターンがある。「生前の行動」「不動産」「トラブルメーカー」が原因になる。
──「生前の行動」?
話を詳しく聞くと、何十年もさかのぼって原因があったりする。親が生きていた頃に長男だけに住宅資金を扶助したとか、自分は介護の負担をしてきたとか、今までは抑えられてきた感情が相続発生と同時に噴出する。法律では「特別受益」「寄与分」と用語は堅いが、普通の言葉でいえばえこひいきや因縁。そういう言葉に置き換えられる「親が生きているうちの行動」によるものだ。つまり生前に発生していた何かのイベント(出来事)が影響している。
──裁判では特別受益や寄与分はなかなか認められないようです。
当事者になると、皆さんけっこう勉強する。これは不公平な特別受益に当たるとか、寄与分をどうしてくれるとか。ところが、特別受益や寄与分は、裁判で認められるにはハードルが高くて、まずきちんとした証拠がなければ認められない。少しぐらいでは不公平とも寄与したとも判断されない。一般の認識と実際の裁判とではギャップが大きい。
──「不動産」とは?
「分けられない財産」の代表例としての相続財産だ。不動産はバブルの頃に相続財産額の75%ぐらいに達したようだ。それがどんどん下がって、この本を書いた頃のデータでは55%になった。比率として依然高く、しかも分けづらい。ただでさえ最近では市況的にも売りにくいうえに、その物件に関係者の思い入れがあったりする。それを分け合おうとしても、しばしばニッチもサッチもいかなくなる。