ところが20年代に入り、構図は大きく変わった。世界はインフレ経済へと転じ、金利が上昇するとともに、アメリカを中心にAI(人工知能)による経済成長期待が高まった。相対的に低金利で成長余力の弱い日本という立ち位置から、1ドル=140〜160円台の円安が常態化した。かつて「円高に苦しむ国」だった日本は、いまや「構造的な円安」が前提になる国へと姿を変えつつある。
この為替の転換は、単に経済力の変化を反映したものではない。戦後日本が積み上げてきた「統治能力への信用」が頭打ちとなり、むしろ削られ始めているというサインでもある。そして、その信用毀損の象徴的な事例こそが、政治家たちが興じる「国を売るチキンゲーム」だ。
車が衝突するまで、国の信用を売り続けるゲームを繰り広げれば、最後は国家のシンボルである「円」が暴落する。その後、猛烈な輸入インフレが生じるのは言うまでもない。
かつての与党は「コスト」も語っていた
戦後日本の政治を振り返ると、与党と野党には暗黙の役割分担があった。野党は「給付増」「減税」「○○は反対だ」と唱え、耳あたりのよいベネフィットだけを前面に出す。一方、与党の自民党はリアリズムの責任政党として、嫌われ役を買って出ても、一定の「コスト」(負担増や安全保障)を説いてきた。
それでも長期政権が続いたのは、経済が順調に成長し、国民の所得が増えていたからだ。経済成長が、国民の不満を和らげるクッションとして働いていた。
ところが、バブル崩壊後の「失われた30年」で、この構図は変化する。経済成長が止まり、将来への期待も薄れる中で、「負担増」を語る自民党は選挙のたびに弱体化し、ときには大敗することも珍しくなくなった。
「政治とカネ」の問題を除けば、退陣に追い込まれた政権として、財政構造改革や消費税率引き上げを実施した橋本龍太郎政権(1998年)、社会保障維持のため将来の消費増税を説いた麻生太郎政権(2009年)がある。番外編として、民主党の野田佳彦政権も「社会保障・税一体改革」の消費増税を決めたのち、安倍晋三総裁率いる自民党に敗れた。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら