公営住宅の退去がこれほど厳しいのには、理由がある。二見氏が続ける。
「一般の賃貸なら、大家さんの裁量で『エアコンやウォシュレットは残していってもいいよ』と言われることもあります。しかし公営住宅は、締めくくりの作業が非常に厳格です。所得に応じて家賃が決まる仕組みであり、国や自治体は無駄な設備にお金をかけません。ウォシュレットなども、付けたい人が勝手に付けるのは自由ですが、出るときは責任を持って元に戻してください、という考えなんです」
もし撤去を怠れば、後から費用を請求されることもある。また、民間と違い「次の入居待ち」が常に存在するため、たとえ「家賃を払うから部屋をそのままにさせてほしい」とお願いしても、数カ月という退去期限を決められてしまうのだ。
戦前の「古銭」はお宝ではない
今回の現場で遺族がとくに頭を抱えたのは、意外にも大量に残された古銭の処理だった。依頼主である娘は、以前にも業者を呼んだことがあると話す。
「古銭の買い取り業者に来てもらったのですが、持って行ってくれたのはほんの一部でした。段ボールで4〜5箱分くらい残ってしまいました」
二見氏によれば、古銭は遺品整理における「悩み事トップ3」に入るほど厄介な存在だという。
「銀行や郵便局に持っていけば現在のお金に換えてくれますが、とにかく時間がかかります。しかも、窓口で対応してもらえるのは基本的に戦後の硬貨だけ。戦前の古銭となると、金融機関でも取り扱いが難しくなります。資源ゴミとして捨てることはできるのですが、お金である以上は安易に捨てることもできず、多くの遺族が処理に困っています」
ダンボール1箱分の小銭は当然ながら重い。部屋の中を移動させるだけでも重労働だ。


















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