【産業天気図・鉄鋼】輸出再開、復興需要始動、自動車も数量回復だが、造船向け縮小。主原料価格弱含みでも販売価格軟調で本格回復は先
12年4月~12年9月 | 12年10月~13年3月 |
鉄鋼業界は2012年4月から1年通して「曇り」にとどまる鈍い景況感になりそうだ。年初は市況が低迷し、輸出も苦戦で「雨」状態だったが、新年度はアジア市況も底打ちし、輸出が再開できており、下期からは復興需要も期待される。自動車向けも数量の回復が顕著。原料価格も弱含んでいるが、これが自動車や造船向けの販売価格で引き下げを招いている。割高な原料を使いながらの操業となるため、「曇り」にもちこむのがやっとという状況だ。
2011年度の国内粗鋼生産は震災があったものの1億0646万トンと健闘。リーマンショック後に落ち込んだ09年の9644万トンに比べれば大きく改善しており、10年の1億1079万トンからも若干の減少にとどまった。今年度も復興需要や自動車向けの復調が見込まれる国内中心に需要が強く1億トン台は維持すると予想される。
ここ数年、鉄鋼各社だけでなく、日本の産業界を悩ませてきた資源価格の高騰は一服。主原料価格は弱含み状況だが、販売価格の引き下げ要請は厳しい。前期も下期は原料が下がり始めていたが、自動車向け(ひも付き)販売価格なども大きく下がった。結果、高い原料在庫を使う際には大きなマージンの悪化を招いた。自動車向けの比率が高い神戸製鋼の鉄鋼事業では下期に赤字が膨らみ、通期でも赤字を計上した。
高炉大手では今年10月に大規模再編が集中する。新日本製鉄と住友金属工業が統合、生まれるのが新日鉄住金、統合効果は1500億円を上回ると見込まれている。日新製鋼と日本金属工業も合併、新たに誕生する日新製鋼ホールディングスはステンレスで国内2位となる。JFEホールディングスもJFE商事を子会社化、電炉事業を再編、さらに造船子会社ユニバーサル造船とIHIマリンユナイテッドの合併もこの10月に予定される。
収益環境は円高定着と中韓の高炉各社の能力増強で輸出は引き続き厳しい状況が続く。足元は、各国の減産が効いてアジア市況の軟化もひと段落、薄板3品などの在庫は減少傾向にあるが依然高水準。ひとたび景気回復となれば中国、韓国とも再び増産に動きかねない。
輸入材も高水準で推移しそうだ。特に多いのが韓国材。特にポスコ材だ。円高ウォン安傾向が続く限り、一定のプレゼンスを確保してきそうだ。ポスコの値上げで安値攻勢は一段落との見方もできるが、国内の鋼材価格も軟調が続くことが懸念され、高炉だけでなく電炉各社のマージンを低く抑えそうだ。
プラス材料は国内需要。東日本大震災からの復興需要が下期にも本格化するとみられ、首都圏の再開発案件も動き出している。低迷が続いた建材用途で底打ち感が出てきた。また、震災影響で昨年上期に沈んだ自動車用鋼板が、今期は挽回生産とエコカー補助金効果もあり、数量ベースでみれば大きく回復しそうだ。原油価格などエネルギー価格の上昇傾向も続いており、油井管の需要も強い。住友金属のシームレスパイプなど、マージン改善も進んでいる。高付加価値が強みの日本の高級鋼には追い風となりそうだ。
(山内 哲夫 =東洋経済オンライン)
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