そういいながら、店の中をくるりと見渡す。すると、絶妙なタイミングで件の常連さんが扉を開けて、入ってきた。
経堂はいい意味で「中途半端な街」
「あ、ちょうどいい、酒井さん、こっちこっち」
添田さんが手招きすると、経堂に住んで30年以上というテキスタイルデザイナーの酒井さん(70)が、「なんの騒ぎだよ」と不思議そうな顔でテーブルについた。
来店の趣旨を伝えると、
「経堂の魅力ねぇ。学生街ということもあるんだろうけど、個人経営の喫茶店が多いよね。どこもそれなりに美味しいコーヒーを出してくれるし、落ち着けますよ」(酒井さん)
酒井さんは、その場でいくつもの店名を挙げてくれた。喫茶Umaiの添田さんがあとを引き取るようにこう話してくれた。
「先程もお話しした通り、うちはまだ半年のお店ですけど、こうやって毎日のように来てくださる方もたくさんいらっしゃいます。閉鎖的じゃないんですよね。新参者にも優しい街です」(添田さん)
腕組みをして考えていた酒井さんが、「そうだなぁ」と唸りながら、経堂の街の印象をこんなふうに語った。
「同じ小田急線の成城学園前のようにゴージャスじゃなく、下北沢のようにヤングの街でもない。“中途半端な大人の街”、そんな印象だね」(酒井さん)
さすが、長年デザイナーとして生きてきただけあって、言うことが洒落ている。酒井さんは「中途半端」という言葉を使ったが、確かに経堂の町並みは、ほどよい落ち着きを持っているように感じる。それが、学生と住民、古くからの店と新しい店、外から来た人と昔からいる人を、無理なく同じ空間に混ぜ合わせる力になっているのかもしれない。


















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