「面接でもそこを一番見ているつもりですが、難しいですね。僕はよく冗談で、『誰かが誰かをいじったり、強く当たってはなりません。いじっていいのは唯一僕だけです』と幹部たちに話しています。
『僕だけは許されますけど、それ以外はしてはなりません』と。重要なのは、利他的な気持ちがあることです。そうでなければ……」
言葉を濁したが、意味は明らかだ。利己的な人は、自ずといられなくなる。その考えは、猿田彦珈琲という組織の根幹を成している。
応募20倍の秘密は「土壌づくり」
冒頭で述べた通り、人手不足が叫ばれる外食業界において、猿田彦珈琲の求人には20〜30倍の応募が殺到する。大塚さんにその理由を聞くと、「よくわからないです」と笑った。でも、と続けた。
「いい人が育ってきたからじゃないですか。居酒屋で偶然会った人に、『ある珈琲屋さんで働きたいけど、いじめが半端じゃないらしくて』と聞いたことがあって。やっぱり、いい環境、人間関係の良さが一番大事だなと改めて思いました」
スタッフが「Yes + α」の姿勢で主体的に動き、それを見た利他的な人が「ここで働きたい」と集まり、いい環境が醸成される。後輩は先輩を見て、主体的に利他的な接客ができるようになる——。その循環こそが、応募20倍の理由なのだ。この循環を作るのが経営陣の仕事だ、と大塚さんは話す。
実際、猿田彦珈琲には「環境で人が変わった」実例がある。
たとえば、強豪が集うコーヒーの競技会「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」で2024年に優勝、その世界大会「ワールド バリスタ チャンピオンシップ」で2025年に5位に輝いた伊藤大貴さん。
彼について大塚さんは、「最初の印象は、『目がキラキラしすぎな、線の細いとてもか弱いイケメン』でした。絶対大成することはないだろうな、ダメな奴だなって思っていました」と懐かしそうに話す。


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら