そして、「Yes + α」の姿勢を先輩が貫けば、後輩スタッフも、「ああ、やったほうがいいんだな」と自主的に動くようになる。スタッフによっては、一人ひとりの客を「お見送り」する人もいる。それも、自己判断だ。
だから猿田彦珈琲には、接客の統一マニュアルがない。
「決まったセリフだけを言って誰かが感動することはない。だったら、マニュアルなんて要らないんじゃないのかなって僕は考えています」
ただ、この考えに則って、なにを言っても、なにをしても自由…… というわけではなく、挨拶やアイコンタクトなど、基本的なコミュニケーションについては徹底したルールが存在している。
それでも、15年間のなかでは「自由度の高い接客」ゆえのリスクも生まれてきたという。
大塚さんは、「具体的な事例は言えない」としつつも、「親しみを込めた冗談のつもりでも、相手が喜ばない発言はNGとするルールを設けた」と話す。
「ちょっと言える範囲を絞ってあげたほうが、みんなも逆に会話しやすいのかもしれないと思うようになりました。『何でもいい』と言われると、言われたほうは戸惑ってしまう」
たしかに、たとえば「どこに旅行にいきたい?」などと尋ねられても、広すぎて答えるのは難しい。「3日間で」「暖かい地域で」などと枠を示すことで、人は思考しやすくなる。接客についても同様なのだろう。
「利他的」な人しか残らない組織
猿田彦珈琲にはもう1つ、絶対に譲れない一線がある。「働く人が利己的ではなく、利他的であること」だ。
利他とは、自分の利益や幸福よりも、他者の利益や幸福を優先することを指す。もっと分かりやすく言えば、「いい人であること」である。それこそが、社内にいい循環をつくるための生命線なのだと。


















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