御徒町に「インド人宝石商」が100軒も集まる理由、世界シェア9割のダイヤ加工国でジャイナ教徒が守り抜く"信用第一のビジネス事情"

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それからも頻繁にインドと日本の間を行き来していたラジェンドラさんだが、1999年に日本に腰を据えることにした。本格的に移住し、2000年には御徒町に会社をつくった。その理由は単に「日本が好きだから」だけではない。実際に日本人とビジネスをしてみたうえでの判断だ。

「商売しやすいんですよ。日本人は約束を守る。そこがしっかりしている。そうじゃない国も多い」

そして約束を守るという性格は、実は御徒町のインド人たちにも共通している。ラジェンドラさんはじめ、この街で宝石を扱うインド人のほとんどがジャイナ教徒。ヒンドゥー教ではないのだ。人口14億のインドの中でジャイナ教徒はおよそ500万人と少数派だが、経済的には成功している人が多い。

というのもジャイナ教の教義のひとつに「嘘をついてはならない」というものがある。これが信用を生む。インドでジャイナ教徒といえば「契約をきっちりと守り、嘘をつかず約束通りに商売をする人々」というイメージなのだ。だから信用第一である宝石ビジネスの担い手にもなっていった。高価格でしかも価値が動きやすく、目利きがモノを言う宝石の世界では、個々の正直さや信頼が商いの背骨になる。ジャイナ教徒はその資質をはじめから持っているのだ。

値段がない世界だが、「そこが面白い」

「宝石は出会い、ご縁なんですよ」

取材時にはちょうど、パキスタンから来たという宝石商とラジェンドラさんの商談が行われていた。ちょうど国際宝飾展が東京で開かれていたので、海外の業者が多いのだそうだ。彼らはペリドットをラジェンドラさんに預け、買い手を探しているところなのだそうだ。

パキスタン人たちの希望の売り値を聞いたラジェンドラさんは、商売仲間たちに価格や品質を伝え、反応を探る。しかし、なかなか引き合いはない。

「興味はみんなあるんですよ」

だが価格との折り合いがつかない。実際に店に来てペリドットの現物を見ても「安いとは思うが、いまはこの石には投資できない」という人もいたそうだ。

商品
一般人でも手の届く価格帯のものも販売されている(写真:筆者撮影)
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