実家暮らしは続けていたと照れ笑いする歩美さん。美術の知識で支援できることにもやりがいを感じられる職場で、親切に教えてくれる同僚に恵まれ、自分のことが少しずつ好きになれたと振り返る。
「そんなときに結婚相談所で会えたのが修平さんです。イケメンではないし、なぜかマスクに穴が空いているのも気になりました(笑)。でも、お見合いで初めて楽しく話せたんです。私の話もいろいろ聞いてくれるのも嬉しくて、また会いたいなと思えました」
一方の修平さんも当時は心境が少し明るくなっていた。自分と同じような生きづらさを抱える知人が病院でADHDだと診断されたと聞き、同じ病院に行ったところ「自閉症の傾向。グレーゾーンにある」との結果。それがむしろ功を奏した。
「お医者さんの話がいちいち思い当たりましたね。私は今まで思ったことを言うと周りに嫌な顔をされてきました。必死に考えて周りに合わせようとすると疲弊して、もっとダメになってしまいます。病気の傾向を自覚しながらも、しゃべりたいことをしゃべろうと開き直ったんです」
「生活力のない人を背負いたくない」持論を叱られて
開き直って臨んだ歩美さんとのお見合いは大成功。修平さんのほうも歩美さんに対して「大らかで一緒にいて居心地がいい」と感じながら仮交際を進め、真剣交際に入る際には自閉症の傾向にあることを打ち明けたという。知的障がい者の支援施設で働いている歩美さんは理解を示し、「修平さんが発達障害なら、私も絶対そうだよ」と笑い飛ばしてくれた。
ここに至っても修平さんはグズグズしていた。歩美さんがパートタイマーの実家暮らしで料理が不得意だという点がずっと気になっていたのだ。
「私は自分で完結できているのに、生活力のない人の分まで背負いたくないからです。最終的には妻の結婚相談所のカウンセラーに叱られました。『あなたは不安だ不安だと言っているだけで、それをどうやったら解消できるのかを考えていないし行動もしていない!』と指摘されたのです。まさに正論。大いに反省して、妻と話し合いました」
今度は歩美さんが動いてくれた。少なくとも自分の分は料理することを覚えたのだ。
歩美さんのカウンセラーは手綱を緩めなかった。真剣交際中の2人に対して、1カ月後には結婚するか別れるかのどちらかを選ぶように通告。足踏みをしがちな修平さんの性格を見越してのことだろう。


















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