これまで、製造業を中心に日本と中国を見てきたが、工業化には資金が必要だ。そのために金融活動が必要になる。工業化は、今後、インド、ベトナム、ミャンマーなどのアジア諸国でも進展するだろう。そうなれば、さらに大きな資金需要が発生する。少なくとも発展の初期の段階では、国内の貯蓄ではまかないきれないだろう。したがって、これらの国々の工業化を支えるための資本供給が必要になる。
金融は中国が遅れている分野だ。そして将来成長の可能性がある分野である。では、日本の金融機関が中国に進出するのは、可能だろうか?ヨーロッパでは、イギリスがオイルマネーを東欧に還流させて、東欧の市場経済化を支えた。それと同じことを日本がアジアでできるのだろうか?
国際化は日本の金融機関の立場から見ても、新しいビジネスチャンスとして重要である。日本国内は間接金融であり、発展の余地が少ない。最近では、企業の資金需要が減退しており、もっぱら国債運用だ。預金を集めて国債に運用するだけなら、素人でもできる。そうした仕事の利益率が高いはずはない。このままでは、日本の金融機関はじり貧である。
この連載でも述べてきたように、日本の製造業の活動はすでに海外展開している。そうした状況下で金融業が国内活動だけでよいはずはない。金融業も海外展開するのは、必然だ。
金融事業の国際展開は、国民に資産を提供する意味でも重要だ。新興国の成長の利益を享受する手段は、新興国企業の株式への投資だけではないはずである。ただし、リスクが高いので、そのコントロールが必要だ。イギリスは国際的な資金仲介をやっているだけだが、日本の場合には自らの貯蓄を使える。その意味で、日本はイギリスよりも有利な立場にいるとも言えるわけだ。
日本はこれまで対外資産をアメリカの国債に投資してきた。しかし、これは利回りの低い非効率な投資だ。対外資産の中で直接投資の比重を高めることが期待されている。