(第50回)中国での金融事業は日本の新しいチャンス

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中国の工業化はFDIが支えてきた

日本の貿易収支は赤字になったが、所得収支が大きいので経常収支は黒字を続けられる。つまり、対外純資産は増え続けるわけだ。仮に経常収支が赤字になっても、これまでの資産ポートフォリオを組み替えて、所得収支を増加させることができる。

輸出を増やそうとあくせく働くのでなく、対外資産の運用利回りを高めるべきだ。それこそが、金持ち国がすることである。日本の対外資産はGDPより大きいので、運用利回りを1%高められれば、GDP成長率を1%高めるより効果が大きい。

最初に、「そもそも中国で、設備投資のための金融が必要なのか?」という問題を考えよう。このような基本的な問題を提起するのは、中国では政府による投資が多く、他方で、民間投資は海外からの資金(FDI)でファイナンスされるものが多いのではないかと考えられるからだ。

中国の経済成長は、外資導入によって始まった。図のように、中国への海外直接投資は1990年代の半ばから急増した。79年以降、年10億~40億ドル程度であったものが、90年代後半からは、300億~400億ドルに増加した。92年にトウ小平が「南方講話」を行い、外資への門戸開放を始めたからだ。開放改革を宣言して後15年もの間、中国経済に大きな変化はなかったが、この頃から成長が顕著になった。国際的なマーケットで日本製品が影響を受けることになるのも、この頃からである。

中国はFDIによって成長した典型例だ。有効需要の面でも、外需に依存する程度が極めて高かった。日本が国内の設備投資や消費を有効需要とし、投資資金を国内の貯蓄によってまかなったのとは大きく違う。

FDIは、2000年には470億ドルだったが、11年には1160億ドルになった。日本からのFDIは00年で30億ドル、05年で60億ドルだ。残高で1位はアメリカ。日本は2位である。香港、台湾などがそれほど多くないことが、やや意外だ。


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