中国では、資本市場が発達しておらず、間接金融が中心だ。また、規制も多い。支店設置、業務内容等について、かつての日本以上に強い規制がある。ここは、社会主義時代の残滓が残っている分野なのだ。しかも、国有大銀行に支配されており、外資の参入は強く規制されてきた。規制がほとんどなく、激しい競争が展開されている製造業とはかなり違う状況だ。
しかし、これを逆に見れば、今後、日本の金融機関にとっても活躍の余地があるということだ。しかも、将来成長することはほぼ確実である。
中国はWTO加盟時の公約に基づいて、06年12月から金融業の外資開放を進めてきた。先頃、国内の合弁証券会社に対する海外企業の出資比率上限を、現行の33%から49%に引き上げることで合意した。また、それらの合弁証券会社に対し、商品や金融先物の取引を認める考えを示した。
製造業について、中国政府は外国企業の参入を認め、これと競争させたことで生産性を高めた。同じことが金融業についても期待できる。だから、中国の立場からしても、開放は望ましいことであるわけだ。
ただし、激しい競争が展開されるはずである。高度成長期の日本のように、「監督官庁との関係を良好に保てば万事安泰」というわけにはゆかないだろう。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2012年6月9日号)
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