音楽界に異変?「フォーク」人気が再燃のワケ 吉田拓郎や長渕剛だけではない

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一方で、「いわゆる」フォーク世代も負けてはいない。50~60代を中心とした往年のフォークファンは、今、「フォーク酒場」に集い、夜な夜な、あの頃の名曲を歌っている。

往年のファンで連日にぎわうフォーク酒場

フォーク酒場「落陽」本店でセッションを楽しむ往年のファン

フォーク酒場とは、会社帰りに手ぶらでふらりと立ち寄って、店に常設しているギターなどを、客が自由に演奏したり、歌ったりできる飲み屋のことだ。フォーク酒場の名店、「落陽」新橋店の店主・田辺芳子さんによると、14年前、荻窪に店を開いた「落陽」本店が日本初のフォーク酒場で、今では日本に100軒以上存在するという。

「ここに来れば、『あの頃』に戻れる。家ではかみさんにガミガミ言われたりするけど、ここには青春がある」。そう話す40代のがんちゃん(男性)は、常連の中では最年少クラス。この日は「ファイト」(中島みゆき)や「浅草キッド」(ビートたけし)などを熱唱し、店で知り合ったフォーク仲間たちが惜しみない拍手を送っていた。

今、フォークの担い手は、往年のファンと、30代以下のニューウエーブに二分化している。しかし、どちらも「自分の思いを伝えたい」という共通の強い思いを感じた。

あらためて今、「フォーク」とはいったい何だろう。

前出の下町フォーク・フェスティバルのプロデューサーであり、バンド「ポカスカジャン」のギター兼ボーカルでもあるタマ伸也さんは、「思いを伝えやすく、人をつなぐ音楽」。それが、フォークソングだと話す。

時代と共に、ヒットする曲調や伝えたいメッセージは確かに変化している。しかしながら、「思い」を伝え、人を「つなぐ」という、「フォーク」が本来持つ役割は変わっていないように感じた。人と人とのリアルなコミュニケーションが希薄になっている今の時代だからこそ、人と人をつなぐ、「フォーク」のような音楽が、どの世代でも大切にされているのかもしれない。

伊澤 佑美 「週刊?!イザワの目」編集長

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いざわ ゆみ

2003年上智大学卒業。編集者、ライター、PRプランナーとして、企業のオウンドメディア運営やコンサルティングのほか、広報業界向けメディアへの寄稿などを手掛けている。トレンドの裏側を取材する「週刊?!イザワの目」編集長も務める。

 

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