脱炭素から安定供給の危機へ「エネルギー大混迷」。目まぐるしく変わる世界のエネルギー情勢の今
以前であれば、燃料の大量備蓄が可能な石油火力発電がバッファーの役割を果たした。しかし、設備の老朽化や過去の電力需要の減少傾向により、多くが休廃止に追い込まれた。そして太陽光発電など出力変動の大きい再生可能エネルギーの増大に伴い、調整力の役割も担うLNG火力発電は設備への負荷が大きい起動・停止を繰り返さざるをえなくなっている。
可児氏は脱炭素化の難しさも指摘する。そのうえで、自社の取り組みについてこう語る。
「火力発電燃料としての水素・アンモニアの導入、洋上風力発電、いずれも近年の世界的なインフレーションによるコスト高が大きな壁になっている。それでも歯を食い縛って事業を実現させる」
その理由について可児氏は「今、脱炭素のサプライチェーンをつくっておけば、将来、事業環境が変わったとき取り組みを加速するのが容易になる」と説明する。
つまり脱炭素のトレンドは、なくならないとの見立てだ。
激変するエネルギー情勢
JERAが直面する状況は、日本のエネルギー供給の厳しさを物語る。安定供給および適正な価格での供給、脱炭素化という課題に取り組みながら、それらをバランスよく実現しなければならない。
状況を複雑にしているのが、エネルギーを取り巻く国内外の情勢の変化だ。情勢はまさに猫の目のように変わっている。
脱炭素化の機運が世界的に高まっていたさなかの2020年10月、当時の菅義偉首相は「50年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を目指す」と宣言、脱炭素社会実現に向けて政策の舵を切った。政策の最大の柱は、再エネシフトや水素・アンモニアなど脱炭素エネルギーの実用化だった。
菅政権の下で21年に策定された第6次エネルギー基本計画では、30年度の電源構成に占める再エネの割合を(従来目標の22〜24%から)36〜38%に引き上げるとともに、水素の供給量を50年に(20年当時の約200万トンから)2000万トンへ大幅に拡大する目標を設定した。官民の間で「水素社会の実現」の機運が高まった。



















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