村瀬エネ庁長官「再エネか原発か」の議論は終焉 脱炭素化通じ、エネルギー自給率向上に全力
世界のエネルギー情勢が激変する中、日本ではエネルギー基本計画の改定の議論が大詰めを迎えています。エネルギー政策の旗振り役を務める、村瀬佳史・資源エネルギー庁長官にインタビューした。
――現下のエネルギー情勢をどのようにとらえていますか。
ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の緊迫化など地政学的なリスクが非常に高まっている。世界はエネルギーの量、価格の両面で、大きなリスクに直面している。私はしばしば申し上げているが、50年前の石油ショックの当時と同様の地政学的リスクに向き合わなければならない。
わが国は、化石燃料の大宗を海外からの輸入に依存する構造から脱却できていない。自動車などの輸出で稼いだ外貨をそっくりそのまま、エネルギーの輸入代金に充てている。2023年には約28兆円を自動車の輸出などで稼ぐ一方、エネルギーやほかの資源の購入に約26兆円を費やしている。化石燃料への過度な依存から脱却し、危機に耐えうるエネルギーの需給構造に転換することが喫緊の課題となっている。
GX推進戦略に基づき、エネルギー構造を強靱化
――どのような取り組みを進めていますか。
2023年7月に「GX(グリーントランスフォーメーション)推進戦略」を閣議決定した。「S+3E」(SはSafety〈安全性〉、3EのEは、Energy Security〈エネルギーの安定供給〉、Economic Efficiency〈経済効率性〉、Environment〈環境適合〉)の原則に基づき、徹底した省エネルギーを前提として、再生可能エネルギーの主力電源化、安全性が確保された原子力の最大限活用などの施策を進めている。とくにエネルギー自給率の向上に資する、脱炭素効果の高い電源への転換を力強く推進していこうとしている。
また、エネルギーのトランジション(移行)期においては、石油や天然ガスなど化石燃料の確保も不可欠だ。調達先の多様化に向け、上流開発事業へのファイナンスもしっかり支援していく。あらゆる手段を活用して、エネルギー資源外交を展開していく。
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