その反面、バッテリーなどの部品で高度な技術が要求される。ただし、それらを組み立てるのは難しくない。「擦り合わせ」はあまり重要な意味を持たなくなる。つまり、PCのような製品になる。EVベンチャーが部品を供給すれば、水平分業化が加速される。PC産業で起きたことが再現されるわけだ。
「擦り合わせ」が不要になれば、日本的組織の優位性が発揮できなくなる。それは、ドイツのメーカーでも同じ事情だ(ただし、フォルクスワーゲンは、「プラットフォーム方式」という生産方式を進めつつある。これは自動車生産の水平分業化を可能とするものとして注目される)。
EVの生産には中小企業が多数参入
これまでの自動車産業は、寡占化が進んだ業界だった。これに対して、EV生産には「スモール・ハンドレッズ」と呼ばれる中小企業が多数参入してくる。中国では、すでに多数の企業が存在する。BYDのような企業の実力は高い。また、中国以外を見れば、03年に設立された米Tesla Motorsなど、EV関連のベンチャー企業は多数存在する。
電子産業では、日本型の垂直統合モデルが、水平分業への移行によって敗退した。90年代のPCだけではない。その後のEMSやファウンドリ・メーカーの発展でさらに大きな変化が起きていることを、この連載で見てきた。液晶パネル生産で垂直統合を標榜したシャープが、世界最大のEMS・ホンハイに飲み込まれたのは、象徴的だった。同じ事態が自動車産業にも起きる可能性が高い。