自動車産業は、経済全体に与える影響が大きい。世界最大の購買国である中国がEVに移行することの影響は大きい。最終組み立てだけでなく部品メーカーも中国に移転したあと、ガソリン車からEVへの大転換が起きれば、日本経済は大きな打撃を受けざるをえない。
ただし、日本の製造業にとって逆風ばかりではない。PCでも、高付加価値の基幹部品を製造するインテルは、先進国アメリカで生き残っている。他のPC部品がほぼすべてコモディティー化した中で、CPUだけはインテルの寡占状態だ。
だから、日本の部品メーカーにとっては、自動車のEV化はチャンスでもある。EVでCPUに相当するのは、電池だろう(EVのコストの半分がバッテリーと言われる)。だから、EVにおけるインテルを目指す企業が登場するだろう。こうして自動車産業での脱系列経営が可能となり、必要ともなる。
部品メーカーのグローバル展開と海外移転が必要になれば、零細・中小企業のレベルで、英語でのビジネスが必要になる。それに対応するには、海外の専門的人材を雇うのが最も効率的だ。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2012年6月2日号)
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