中国経済で、エネルギー、通信、鉄道などの分野は、国有巨大寡占企業によって支配されている。しかし、これが中国経済のすべてではない。企業家精神にあふれる民間企業が現れている分野もあるのだ。
自動車産業も外資と組んだ国有大企業が支配しているが、これまで見てきたように、奇瑞、吉利、BYDのような民間企業が成長している。自動車部品では、ベアリング・メーカーの万向(ワンシャン)がある。
通信機器の分野では、華為技術(ファーウェイ・テクノロジー)が注目される。同社は、1988年に設立された、通信機器のハイテク企業だ。企業相手のビジネスが中心なので、一般にあまり知られていないが、すでに世界の通信業界でトップクラスだ。モバイル・ブロードバンド製品、モバイル・ソフトスイッチ、パケットコア製品、光ネットワーク製品では、世界シェア1位だ。
同社の顧客には、中国電信、中国移動、中国網通、中国聯通などの中国企業だけでなく、ブリティッシュ・テレコム、シンガポール・テレコム、ドイツ・テレコムなどの外国企業もある。2008年12月の『ビジネスウィーク』誌「世界で最も影響力がある企業10社」は、アップルやトヨタ自動車、JPモルガン・チェースなどと並んで同社を選んだ。
華為と同じように企業相手のビジネスをしている中国のグローバル企業は、他にもある。ボストン・コンサルティング・グループが発表した「新しいグローバル・チャレンジャー100社2011」には、産業の既存秩序を揺るがす新興国企業として、中国企業33社が選ばれている。どの国よりも数が多く、その多くは一般に名を知られていない。
インターネットでは多数のベンチャー企業がある。阿里巴巴集団(アリババ・グループ)や百度(バイドゥ)はよく知られている。それぞれYahoo!/eBayとGoogleの中国版であるが、その他のネットサービスでも、アメリカのサービスと同じものを中国のベンチャー企業が提供している。YouTubeはTudou、AmazonはDangDang.com、FacebookはOak Pacific Interactiveといった具合だ。