「日ロ平和条約」は、長くて困難な道である 「プーチン訪日延期」の正しい読み方

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2013年4月、日本の首相として10年ぶりにロシアを公式訪問した安倍首相はプーチン大統領との間で、「平和条約締結交渉をこれまでに採択された全ての諸文書及び諸合意に基づいて進める」ことで合意した(共同声明)。これによると、「日ロ号」はこれまで何回も確認されてきたのと同じ高さで支えられていると言える。

ところが、プーチン大統領は、1956年の日ソ共同宣言以外何も合意されていないと言わんばかりの発言をするようになった。

以下は2012年の発言だ。「1956年の日ソ共同宣言第9項には、平和条約の締結の後にソ連は2島を日本に引き渡すと書いてある。つまり平和条約は、日本とソ連の間に領土をめぐるそれ以外の要求がないことを意味する。2001年に森首相は私に『ロシアは56年宣言に立ち返る用意はあるか』と聞いた。私は、用意があると答えた。日本側はしばらく間を置いてから、4島がまず欲しい、そのあとに平和条約だ、と言いだした。これは既に56年宣言ではない。我々は再びスタート地点に戻ってしまったのだ」(朝日新聞2012年3月3日)。

プーチン大統領の本音は?

プーチン大統領は平和条約交渉をどのような方向に導こうとしているのだろうか。非公式な発言の内容を過度に重視するべきでないが、公式の発言だけを見ても、プーチン大統領とエリツィン大統領の交渉に臨む姿勢は大差がある。つまり、プーチン大統領は領土問題の解決に向けて「日ロ号」をさらに一段高いところまで押し上げる努力をするような姿勢を見せていないのだ。

以上のことを勘案すれば、今後の日ロ交渉は、1956年日ソ宣言以降、積み重ねてきたことの確認から始めなければならない。「日ロ号」がズルズルと落ちている状態で合意を急ぐのは禁物だ。ロシアが本当に日本との条約をまとめる熱意を持つようになり、かつ、強い政治力で交渉できるようになるまでは、慎重に、粘り強く対応していく必要がある。

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