きっとこうして顔を合わせて話せる機会がなかなかないのだろう。男性はピアノの椅子から立ち上がり、ペットボトルの上をガラガラと音を立てながら、ドアから顔を出して玄関を覗いた。面と向かって話をするのはやはり怖いようだ。
「11月にちょっと片付けさせてもらいますって言ったんですけど。あと2~3回はかかるかもしれないけど」(依頼主の男性)
「(マンションの人たちは)そんなこと聞いてないって言っていますよ。今、理事会の人で集まって話をしていますが、『11月には片付ける』くらいのことしか聞いていないんですよ。別にゴミを出すことがダメだと言っているわけではないんですよ。トラックを停める場所だったり、エレベーターの養生だったり、いろいろあるんですから、とにかく事前に連絡をください」(管理人)
管理人が去った後、男性は青ざめた表情でこう呟いた。
「管理人と顔を合わせると、心臓がキュッと締め付けられるんですわ」
カチカチに踏み固められた「20年分のゴミ」
「とりあえず向こうの部屋に行けるように、廊下をまずは貫通させるんで」
二見氏は、腰の高さまで積み上がり、カチカチに踏み固められたゴミの層を足で崩し始めた。
「当初は部屋の中でゴミの分別をしようと思っていましたが、ゴミが踏み固められているので、想像以上に量があります。管理人さんとの兼ね合いもあるので、部屋で分別はせず、ゴミの搬出を優先します」(二見氏)
固まったゴミを足でほぐし、柔らかくしてから、大きなちりとりで一気にすくい上げる。ゴミの分別は外で待機しているパッカー車へ投入する際に行う。そして、作業開始から2時間後。ついに、「開かずの扉」の先に足を踏み入れることになった。
(「開かずの扉」の先には何があったのか……この続きは12月27日に配信します)
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