「妻がいなくなって、ゴミ屋敷に」「管理人が怖くてゴミが出せない…」 1人で《4LDKのゴミ屋敷》に暮らす60代男性が抱えた孤独

✎ 1〜 ✎ 76 ✎ 77 ✎ 78 ✎ 79
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

きっとこうして顔を合わせて話せる機会がなかなかないのだろう。男性はピアノの椅子から立ち上がり、ペットボトルの上をガラガラと音を立てながら、ドアから顔を出して玄関を覗いた。面と向かって話をするのはやはり怖いようだ。

「11月にちょっと片付けさせてもらいますって言ったんですけど。あと2~3回はかかるかもしれないけど」(依頼主の男性)

「(マンションの人たちは)そんなこと聞いてないって言っていますよ。今、理事会の人で集まって話をしていますが、『11月には片付ける』くらいのことしか聞いていないんですよ。別にゴミを出すことがダメだと言っているわけではないんですよ。トラックを停める場所だったり、エレベーターの養生だったり、いろいろあるんですから、とにかく事前に連絡をください」(管理人)

ゴミ屋敷
ゴミに埋もれた部屋で依頼人と話をする筆者(写真:筆者撮影)

管理人が去った後、男性は青ざめた表情でこう呟いた。

「管理人と顔を合わせると、心臓がキュッと締め付けられるんですわ」

カチカチに踏み固められた「20年分のゴミ」

ゴミ屋敷連載
この連載の一覧はこちら

「とりあえず向こうの部屋に行けるように、廊下をまずは貫通させるんで」

二見氏は、腰の高さまで積み上がり、カチカチに踏み固められたゴミの層を足で崩し始めた。

「当初は部屋の中でゴミの分別をしようと思っていましたが、ゴミが踏み固められているので、想像以上に量があります。管理人さんとの兼ね合いもあるので、部屋で分別はせず、ゴミの搬出を優先します」(二見氏)

ゴミ屋敷
20年分のゴミはとんでもない固さに踏み固められている(写真:筆者撮影)

固まったゴミを足でほぐし、柔らかくしてから、大きなちりとりで一気にすくい上げる。ゴミの分別は外で待機しているパッカー車へ投入する際に行う。そして、作業開始から2時間後。ついに、「開かずの扉」の先に足を踏み入れることになった。

(「開かずの扉」の先には何があったのか……この続きは12月27日に配信します)

ゴミ屋敷
玄関からすでに進むのが困難な状態だった今回の家。この扉の先はいったいどうなっているのか(写真:筆者撮影)
國友 公司 ルポライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くにとも こうじ / Kozi Kunitomo

1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーに。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事