「妻がいなくなって、ゴミ屋敷に」「管理人が怖くてゴミが出せない…」 1人で《4LDKのゴミ屋敷》に暮らす60代男性が抱えた孤独

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「ごめんなさいね。汚くて」

依頼主は、そうしきりに謝罪の言葉を口にした。なぜ、これほどまでのゴミ屋敷になってしまったのか。話を聞くと、男性はポツポツと過去を語り始めた。

この部屋には、もうほとんど立ち入っていないのだという。きっかけは、20年ほど前の離婚だった。

「言いにくいんですけど、離婚したんですよ。はじめは家庭内別居になって、私は玄関から入ってすぐ右手にある、先ほどの部屋で生活していたんです。だから、これは私が使っていたベッドの残骸なんですよ」

ゴミ屋敷
男性がもともと使っていた部屋に置かれた、解体されたベッド(写真:筆者撮影)

男性はこのマンションに住んで30年弱になる。当初は妻と、2人の子どもの4人で暮らしていた。

子どもたちがまだ幼稚園や小学校に通っていた頃は、至って普通の家庭だったという。しかし、性格の不一致から夫婦仲は悪化し、家庭内別居を経て、約20年前に離婚。子どもたちも独立し、広い4LDKに男性1人が残ることになった。

妻がいなくなった途端、ゴミが出せなくなった

家族で暮らしていた頃、家事の一切は妻が担っていた。ゴミ出しのルール、分別の仕方、水道光熱費や管理費の支払いなど、生活のすべてを妻に任せきりにしていた男性は、1人になった途端、自分では何もできなくなってしまった。

「奥さんが色々片付けてくれていたので、1人になったら何もできなくなってしまいました。仕事から帰ってくるのも毎日遅くて、休みの日もしんどくて、『明日でいいや、明日でいいや』とズルズル先延ばしにして、何十年と経ってしまいました」

ゴミ屋敷
玄関を入って左手にある部屋。ゴミの分別方法がわからず、管理人に恐怖し、この状態になってしまったという(写真:筆者撮影)

分別の方法もわからずゴミを出したら、近隣住民や管理人から何か言われるのではないか。そう思うとゴミを捨てられなくなった。

「だったら家に置いておこう」

そうして、部屋はゴミ屋敷へと変わっていった。また、広い4LDKという環境も事態を悪化させた。使わない部屋にゴミを放り込んでおけば、生活スペースは確保できるし、外から見えることもない。

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