こうして、ゴミは誰にも気づかれることなく、静かに、確実に増えていったのだった。
取材中、部屋で男性の話を聞いていると、マンションの管理人がやってきた。すると、男性の身体が固まり、明らかに表情が歪んだ。
「僕が対応しておくので大丈夫ですよ。気にしないでください」
二見氏がそう言って部屋を出ると、男性は「もう、隠れておきます」とピアノの椅子に腰を掛け、声を潜めながらこう話した。
「なんか言っていますね……。ごめんなさいね、ずっとそんなんなんですよ。もう嫌なんです。ああいうのが、もう嫌なんです」
管理人が怖い…「密室」で孤立する60代男性
男性は管理人に萎縮していた。この状況では無理もないが、マンション側とトラブルになっているのだ。管理人は数回変わっている経緯があるのだが、過去にはこう言われたこともあったという。
「管理費をどうやって払えばいいかわからず、何カ月分も溜まってしまって。『ちゃんと払いますから、ちょっと待ってください』と言ったんですが、『職場はわかっているんだから、行って暴れるぞ』と言われたことだってあるんですよ」
異臭騒ぎもあった。
「『臭い!』と言われて。『僕のゴミが臭いんですか?』と聞いたら『そうや!』と言われて。そんならもうゴミ出しませんわって。換気扇も回しませんわって」
換気扇を回せば、廊下に臭いが漏れ、管理人に注意される。だから換気も止め、窓も閉め切る。その結果、部屋の環境はさらに悪化し、男性はますます孤立していった。
「悪いのは自分なんですけど……言い方っちゅうもんがある。もう周りが気になって、気軽に外へも出られなかったんです」
しばらくすると、再び管理人が部屋を訪ねてきた。
「そんなに長く話すつもりはないから。ちょっと出てきてもらえますか」



















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