「私自身」が宇宙の中心にいる? 138億年の宇宙史から「人間がここに存在する意味」を見ていくと驚愕の事実が判明

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人間原理とは、どうして僕たちがほかでもなくこの状態の宇宙にいるのかを、人間の存在からさかのぼって推理していく説明法だ。(82ページより)

アメリカの物理学者スティーヴン・ワインバーグは人間原理を利用して、1990年ごろに観測されたダークエネルギー(宇宙の膨張を加速させていると考えられている未知のエネルギー)の密度がどうして70%なのかを説明しようとしたという。

私たちの内部にある宇宙

人間原理によると、次のような答え方ができるようだ。

もしダークエネルギーの密度がいまより大きかったら、宇宙の膨張が加速するため、宇宙の物質が1つの地点に集まるのは難しかったと推測できる。そうなると、銀河や天体の生成も不可能になる。

逆にダークエネルギーがいまより小さかったなら、宇宙の物質は急速に圧縮されたはずだ。その場合、同じくいまの銀河と太陽系が形成されることはなかっただろうし、もちろん地球と生態系も形成されない。

だから、私たちは次のような考え方を持つ必要があるのだと著者は主張するのだ。

いろんな宇宙がある。数々の宇宙がそれぞれ無限の可能性と、それぞれちがう定数を持つ。
なかには天体と生命体が形成されるための、適切な密度のダークエネルギーを持つ宇宙も数多く存在するはず。
そこには僕たちと同じくらいの知能を持つ生命体がいる宇宙が、あるかもしれない。(82〜83ページより)

当然ながらここでご紹介したのは、562ページに及ぶ本書のほんの一部分にすぎない。だからこの場ですべてを結論づけることは不可能だし、逆に言えば、この何十倍もの世界観がここでは展開されているということになる。

しかも専門的な知見も少なくないだけに、ちょっと斜め読みしただけでは理解しづらく、何度か読み直さなければならないパートも出てくるかもしれない(私もそういう体験を何度もした)。

だが、そこに意味があるのだ。

断言できるのは、そうした作業の先に底知れない“宇宙”が広がっているということ。つまり、それを少しでも理解するために時間をかけるだけの価値はあるということである。

考えようによっては、ゆっくり本を読むだけの時間をとりやすい年末年始の休暇に最適な1冊だとも言えよう。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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