「12.9インチiPad」はペン入力が秀逸だった アップルの新製品を最速レビュー
タブレット端末へのキーボードの追加方法としては、“模倣”と言われても反論できないくらいによく似ている。しかし、商品はキーボードだけでできているわけではない。
Surfaceシリーズは、Windowsパソコンを起点にしてタブレット端末の領域に切り込んでいくアプローチだ。もともと、Windows 8以降のマイクロソフトが、そうした領域を狙って基本ソフトとハードウェアの開発を行ってきたのだから当然だろう。SurfaceシリーズがType Coverというキーボード付き画面カバーを開発したのは自然な成り行きだ。
Smart Keyboardはとてもシンプル
一方、iPad ProはあくまでもiPadだ。Smart Keyboardはストロークが深く、タッチや配列に慣れれば(残念ながら日本で一般的なJIS配列のキーボード設定はなく、英語版キーボードに使われているASCII配列のみしか用意されない)サクサクと文字入力ができるはずだ。しかし、だからといてパソコンの代替になるわけではない。
アルファベット以外のキー配列はMacやWindowsパソコンのルールとはかなり異なり、これは日本語入力時のiOSの振る舞いにも言える。キーボード上の「地球アイコン」を押すと言語の切り替えで、制御キーらしい制御キーもほとんどない。iOSのホーム画面に戻るキーすら存在しないシンプルなものだ(コマンド+SHIFT+“H”というホーム画面ショートカットはある)。パソコンでの作業に慣れた人が、そのままあらゆる処理をiPad Proでこなそうと思っていると、使い勝手に戸惑うかもしれない。
しかし、アップルは“パソコンが好みの人はパソコンを使えばいい”と思っているのではないだろうか。既存のパソコン好き、パソコンを道具として使いこなしている人にパソコンの代わりに使う道具を提供しているのではなく、パソコンは使わずにスマートフォンやタブレット端末で物事を解決したい人にiPadには“こんな使い方の可能性もある”と誘っているように感じた。
これまでもiPadにはサードパーティーから多くのキーボード商品が発売されていたのだから、高性能かつ大画面というだけで簡単に適応分野が広がるわけではないと予想する人も多いだろう。しかし、使っていると“大画面”がiPadの領域を拡大するために重要であることが理解できる。
2分割してほかの情報を見ながら作業を行うといった使い方はもちろん、画面サイズと画素数が広がることで、ユーザーインターフェイスそのものが変化しつつある。
“しつつある”というのは、まだ大多数のiPadアプリ開発者がiPad Proを意識したプログラムをしていないためだ。しかし、iPad Proの大きさと解像度を生かしたアプリが増えてくれば、見方は変わってくると思う。後述するApple Pencilに対応するアプリは続々と登場しているが、iPad Proの大きさと解像度に対応してユーザーインターフェイスを最適なものにする動きは、まだ鈍いように見える。
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