小さな1コマから見えてくるのは、地域や国の課題であり、
ケニアのランナーの実家を訪ねて
2025年1月、ケニアの田舎町を取材で訪れていた。ナイロビから車で2時間ほど北に向かい、舗装が途切れた赤土の道をさらに進む。取材の目的は、箱根駅伝やニューイヤー駅伝で走るケニア人ランナーたちの暮らしを知ることだった。
ムモ・ジョセフ、27歳(当時)。2025年春から日本の実業団チームに所属することが決まり、ケニアで練習を続けながら来日の日を待っているランナーだ。
彼の故郷であるカエワの村へ向かう道中、ジョセフはなぜか落ち着かず、何度も後部座席から話しかけてくる。
「僕の地元に日本人が来たことなんて、たぶん一度もないよ。だから今日はね、家族みんな呼んでおいたんだ」
「みんな?」
「母、姉、叔父、叔母、姉の旦那さんと子ども。それから僕の妻と子どもたち。15人くらいかな。子どもたちは学校を休ませてる」
ケニアの田舎では、家族で特別な出来事が起きると、学校より優先される。私が日本から来たというだけで、祭りの日になったのだろう。



















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