「チクったら殺すぞ」万引き常習犯の中学3年生男子がついに補導!"高校合格"取り消しを恐れ号泣する末路 『子供部屋同盟』5章④

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浩一は指示書通り、子供アプリでカメラのスイッチを入れた。すると子供テレビには、児童公園が映された。シャツに仕込んだボタンカメラの映像だ。つまり成敗Dは、もう子供テレビで放映されている。

浩一はスマホをポケットへ入れると、裏門から中学校の敷地内へ忍び込んだ。三年生の下駄箱は、旧校舎の端にある。夕暮れの裏庭を、身を低くして忍者のように駆けた。

職員室にはまだ明かりが灯っている。何人かの教員は学校に残っているはずだ。教師に見つかった場合、言い訳のしようがない。特に北中には、過去に暴力沙汰を起こした体育教師が何人かいる。

裏庭から昇降口へと入り、三年三組の下駄箱を探す。三列目に三組の下駄箱を見つけて、ポケットからポリ袋を取り出した。

最初の一人の上級生の名前を見つけて、ポリ袋の画鋲をつまもうとしたとき、焦ったためにすべての画鋲を廊下へぶちまけてしまった。

慌ててその画鋲をリノリウムの床から拾う最中に、廊下の先に現れた教員と目が合う。生活指導を担当する、体育教師の武田だった。最悪だ。この状況で最も会いたくない教師だった。

武田は大学で水球をやっていたらしく、肩と二の腕の筋肉が隆起している。体育会気質で、指導のためには体罰も止むを得ないという考えの持ち主だ。生徒を殴って鼻骨を折ったなんて噂すらあった。

体育教師の武田に見つかった!

武田は浩一を見つけると、訝しそうに目を細め、大股でこちらへ近づいてくる。

咄嗟に言い訳を考えるも、午後六時過ぎに学校内にいていい理由なんて見つからない。狼狽するうちに、武田はもう目の前に迫っていた。武田は野太い声で言う。

「おまえ、こんな時間に校舎内でなにしてる?」

「あの、ちょっと、忘れ物をしてしまって……」

「忘れ物? 何を忘れたんだ?」

「あの、数学の教科書です。教科書がないと宿題ができないので、慌てて取りにきたんです……」

そこで武田は浩一の足元から顔までを一瞥した。

「おまえ、何年生だ?」

三年生の下駄箱に、一年生の自分がいる状況は明らかに不自然だった。武田を前にして頭が真っ白になり、もうそれ以上はどんな言い訳も思いつかない。

と、武田は浩一の右手を見て、眉間に皺を寄せた。浩一も武田の視線を追うように、自身の右手を見る。

指の隙間から、ポリ袋の一部がはみ出ていた。そのはみ出たポリ袋の中で、銅色の画鋲が見え隠れしていた。

ピンポンパンポーン。

校内放送のチャイムが鳴り響いて、浩一はびくりと体を震わせた。

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