キリスト教がビッグバン理論を宗教的に解釈して、すんなり受け入れる姿に不満を抱く人もおり、物理学者のスティーヴン・ホーキングもその1人だった。
科学を毛嫌いする宗教側の不都合な論理
ホーキングは1981年、イエズス会主催で開催された宇宙論会議に出席した。カトリック教会は、中世に科学が後退した原因が宗教であることを認めていた。
同じような問題がふたたび起こらないように宇宙論に関する研究機関を設置して、定期的に専門家の意見を聞こうとしていたのだ。
ホーキングはここで「宇宙の時間と空間は有限だけれど、境界を持たない」という内容の講演を行った。
講演会の後、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世はホーキングに言った。
「ビッグバン以後の宇宙の進化を研究するのはいいことですが、ビッグバンじたいは研究の対象になりません。なぜなら、それは神の創造の瞬間であり、神の御業(みわざ)ですから」
ホーキングの講演の内容は「時間と空間にははじまりがないのかもしれない。つまり、神による創造の瞬間だといえるものじたいがなかった可能性がある」という内容だった。ホーキングは「ビッグバン以前」を語ることはできないと考えた。
ホーキングの例だけでなく、宗教がある一定の先入観と偏見にもとづいて科学の成果を否定したり抑圧したりしてきたという疑惑は晴れそうにない。それと同時に、ジョルジュ・ルメートルの例を見ると、科学のほうも宗教を毛嫌いしているようにも見える。
この2つのエピソードを通して言いたいのは、科学も宗教も問題だという批判ではない。ただ、人間という存在の一般的な特性について言いたいだけだ。
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