宇宙の時間と空間には「はじまり」も「終わり」もない。宗教と科学が考えた「ビッグバン以前」とは

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こういった宇宙誕生の記録についてどう思うかはわからないけれど、かなり多くの人がこの記録を信じている。

『旧約』聖書にもとづいているアブラハムの宗教であるキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の信者は、世界人口の54%にのぼる。

ビッグバンは神の創造の瞬間なのか?

一方で、宗教的な説明に抵抗を感じる人、または教育課程で科学を学んできた人は「創世記」よりはビッグバン理論に親近感を覚えるだろう。

ビッグバン理論では、米粒よりも小さく圧縮されていた宇宙が大爆発とともにいまの大きさに膨張したという。この理論は、科学者だけでなく一般の人にも受け入れられていて、宇宙の誕生に関する科学的な説明として認められているけれど、はじめて登場したときの反応は、いまとはかなりちがっていた。

1927年にベルギーの天文学者ジョルジュ・ルメートルが大爆発理論を提案したとき、科学界の視線は冷ややかだった。

ルメートルはローマ・カトリックの神父だったから、近代以降の科学が排除しようと努力してきたキリスト教の影が、彼の理論によって再び呼び戻されるのではないか……と恐れたのだ。

「光あれ」――ビッグバン理論には、どこか「創世記」を連想させるところがある。人類の半数以上が『旧約』を認めているので、「宇宙の歴史は光の爆発とともにはじまった」という理論は大衆のパラダイムに受け入れやすい説明だったのだ。

宗教には「超越的な存在としての神さまは、現実世界では発見されない」という致命的な不安要素がある。ビッグバン理論がその不安を消してくれたのだ。神さまはビッグバン以前に存在していて、その爆発を起こした主体だと説明すればいい。

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