中国の水産物「輸入停止」よりもヤバい資源の実態…1つの国に輸出入で過度に依存してはいけない

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一方、日本の2024年におけるサバ類の漁獲量は25.6万トンで、そのうち約6割が非食用(マグロなど養殖用のエサ向け)となっています。ここで小サバの漁獲を制限し、成長を待って産卵できるサバを増やすことが重要です。漁獲量を制限すると短期的には供給が減り魚価が上がりますが、その結果として水揚げ金額は必ずしも減少しません。今年のノルウェーサバでは、漁獲量が2割減っても魚価の大幅上昇によって、水揚げ金額はかえって大幅増となることが確実視されています。

サバはあくまで一例にすぎませんが、多くの魚種で数量管理が徹底されていないために、資源管理の手法が十分な効果を発揮していないのが日本の現状です。その結果、多くの主要魚種で資源量が大きく減少しているのが実情です。

科学的根拠に基づく資源管理を徹底する

政府は「国際的に見て遜色のない資源管理システムの導入」を掲げています。しかし、社会全体でその重要性への理解がまだ十分ではないため、最近ではスルメイカの漁獲枠増枠のように、将来の資源にとっては逆効果となりかねない政策判断も行われています。

一刻も早く、科学的根拠に基づく資源管理を徹底し、水産資源を回復させていくことが必要です。そうなれば、輸出市場が世界に広がるだけでなく、今後仮に輸入数量が減少しても、食用となる国産水産物を十分に確保できる体制を築くことができます。

片野 歩 Fisk Japan CEO/東京海洋大学 特任教授

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かたの・あゆむ / Ayumu Katano

東京海洋大学 特任教授。早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

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