中国の水産物「輸入停止」よりもヤバい資源の実態…1つの国に輸出入で過度に依存してはいけない

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次のグラフは、水産物の輸出量と輸出金額の推移です。赤い折れ線が金額、青い棒グラフが数量を示しています。筆者が問題視しているのは、この青い棒グラフ、つまり輸出量の減少です。その大きな背景には、日本の生産量(漁業+養殖)が毎年のように過去最低を更新し続けているという現実があります。

(出所)水産白書

中長期的に単価が上がり続ければ、一定の数量さえ確保できれば輸出金額は伸びる傾向にあります。しかし、肝心の水産物そのものがなければ、どれだけ単価が上がっても、いずれ輸出金額は減少していきます。短期的には、たまたま小サバや小型のマイワシが大量に発生し、それらを冷凍して一気に輸出するような年もあり、その場合は数量が増えることもあります。

ただし、大きく成長する前の魚を大量に漁獲してしまう「成長乱獲」は、資源管理にとって致命的です。この点が社会に十分理解されていないために、「魚がいても漁師がいなければ意味がない」とか、「魚がいるのだから制限せずに獲らせてほしい」といった、資源管理の発想とは逆方向の主張が出てきてしまいます。

輸入ではなく輸出が制限されたらどうなるのか?

これまで述べてきた通り、中国が日本の水産物輸入を制限すること自体は、マクロに見れば日本全体の水産業にとって決定的な問題ではありません。必要なのは、中国に偏らない輸出先の多様化です。ただし、価値のない小さな魚を大量に供給するということではありません。科学的根拠に基づく資源管理で資源を回復させ、価値の高い大きな魚の供給を増やしていくことが重要です。

今回の中国の輸入停止で、ぜひ考えていただきたい重要な論点があります。それは、もし輸入ではなく、中国からの水産物輸出が制限されたらどうなるか、という点です。

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