中国の水産物「輸入停止」よりもヤバい資源の実態…1つの国に輸出入で過度に依存してはいけない

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では、日本の水産業の本当の強みとは何でしょうか。その答えは、科学的根拠に基づく資源管理によって水産資源を持続可能な水準まで回復させ、加工も含めてバリューチェーンを日本国内で完結させていくことです。持続的に利用できる水産資源さえ確保できれば、地方創生につながり、国内需要も十分に賄うことができます。

そのうえで、余剰分を輸出していけばよいのです。そうなれば、仮に他国からの水産物供給が止まることがあっても、国産で補うことができ、問題はありません。全国各地で本来水揚げされていた水産資源を回復させ、前浜中心の水揚げとその加工に切り替える。その全体像・ビジョンを示していきたいと思います。

具体的にはどういうことか? サバの例

身近な例としてサバを挙げましょう。今秋(2025年)のノルウェーサバの買付シーズンでは、漁獲枠が2割削減された影響で、買付価格が前年同月比で2倍強に暴騰しました。さらに9月末には、国際的な科学機関であるICES(国際海洋探査評議会)から、翌年の漁獲枠を今年の7割削減するよう勧告が出され、来年の価格がさらに上がることが懸念されています。

今年ノルウェーで漁獲されたサバは、水揚げのピーク時には平均で500g程度と大きなサイズでした。一方、日本で漁獲されているサバは、「ジャミ」や「ローソク」と呼ばれる200〜300g程度、あるいはそれ以下の未成魚・幼魚まで獲ってしまう構造になっており、ノルウェーとは対照的です。ノルウェーでは予防的アプローチをとることで、漁獲枠を大きく上回る漁獲が可能な年であっても、将来の資源を見据えて漁獲を抑制しています。

それでも、ノルウェー、EU、英国、アイスランド、ロシアなど関係国の思惑の違いから、国別の漁獲枠が必ずしも科学的根拠に基づいて設定されてこなかったという問題は残っています。しかし、各国とも日本のようにサバの幼魚まで大量に獲るようなことはしておらず、「小さいサバは獲らない」という点では日本と決定的に異なります。

日本がサバの例でできることは何か。それは、小さなサバをできるだけ獲らせないようにすることです。一般にはあまり報道されていませんが、ノルウェーサバの今年の漁獲枠は約15万トンで、そのうちおよそ99%が食用として利用されています。

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