「医療クライシス」を超えて 近藤克則著
医療危機が指摘されて久しい。「医療再生」を掲げた民主党への政権交代後も実効性のある対策が講じられないまま、現在に至っている。「第三の道」を旗印に、財源の拡充を通じて医療の質向上に取り組んできた英国とは対照的だ。
なぜ、英国にでき、日本ではできないのか。著者は財政再建や経済効率など異なる価値を重視する人々に医療費拡充(=負担増)の必要性を理解してもらうためには、医療界が自らの全体像を「見える化」し、医療行為や支出についての「説明責任」を果たすことが重要だと考える。
そのため英国に倣った、日本版NSF(National Service Framework)の策定を提唱する。これは医療・福祉全体および個別分野ごとに現状の評価に基づいて課題を抽出し、10年後の数値目標と5年後の中間目標を定めるという戦略大綱だ。そのうえで財源のあり方も含めて、社会的合意を得るべきだとしている。的を射た議論の書だ。
医学書院 2940円
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